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「姉妹は自力で交渉できない。緊急性もあり、被害が次々と明るみに出たので、即座に対応した」。富士見市の相談窓口である商工業振興課の担当者はこう明かす。
姉妹宅が「競売にかけられているらしい」との隣人からの電話連絡があったのは、三月九日。相談員や高齢者福祉課の職員らが現場へ向かった。自宅には、この日を競売入札締め切り日とするさいたま地裁川越支部の公示送達があった。市は即日、競売中断を申し立て、競売は中止に。姉妹は自宅が競売にかけられていることも理解できない状態だった。
数日後、市の委託で、NPO法人(特定非営利活動法人)ピュアライフネットワークの理事長で一級建築士の石田隆彦さんが調査に乗り出した。
「これほどまでひどいとは思わなかった」と石田さん。姉妹宅の天井裏などには十個で十分な耐震補強金具が市価の五倍以上の値段で約八十個付けられていた。約三十台も設置された換気扇の中には、配線がつながっていないものも。市の調査では二〇〇二年春以降で少なくとも十九業者、約五千万円の契約が結ばれていた。
■業務改善や停止命令
市は五月二十三日に、清水徹弁護士を姉妹の成年後見人候補として、さいたま家裁川越支部に申し立てた。市と清水弁護士は契約した業者に対して、工事代金を返金するよう要請。五社が計四千三百万円の返還を申し出ているという。埼玉県も上田清司知事が、悪質な業者は名称を公表するなど行政処分を検討するよう関係部局に指示した。
悪質業者に対する行政処分は、かつて消費者行政関係者の間で「抜かずの宝刀」といわれていた。「処分するには有識者らの第三者でつくる審議会で了承しなければならず、明確な問題点がないとすぐには処分できなかった」と、ある自治体職員は明かす。
昨年、消費者保護基本法が改正されたのに合わせ、県は条例を改正。七月一日からは緊急性があり、被害拡大の恐れがある場合には、審議会を経なくても処分できるようになった。
悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は「三年ほど前から、経産省が悪質商法の取り締まりに力を入れ始め、流れが変わってきた」と指摘する。確かに業務改善や業務停止命令の行政処分に踏み切るケースは、二〇〇〇年度に全国でわずか四件だったのに対し、〇四年度は四十件と増えている。しかし、全体から見れば微々たるものだ。
刑事責任を追及することが、最大の抑止効果になりそうだが、堺さんは「特に業者側に『だます意思があったか、どうか』を客観的に証明しなければならず、難しい」と言う。「富士見市の例は今後のモデルケースになりうる」と堺さん。「悪質業者に最も打撃を与えるのは実名公表と刑事罰。的確な対応を期待しています」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050609/eve_____sya_____002.shtml