2005年06月04日(土) 18時56分
見せ物にしないで…“風太ビジネス”に異論(読売新聞)
二本足で立つレッサーパンダ「風太(ふうた)」の商標登録をめぐり、動物園同士でホットな議論が起きている。
風太を飼育する千葉市動物公園が「商標登録は風太のイメージを守るため」としているのに対し、アザラシなどの「行動展示」で有名になった旭山動物園(北海道旭川市)はホームページ(HP)に「『見せ物』にしないで」と緊急メッセージを掲載、“商業利用”を痛烈に批判した。そんな論争をよそに、風太は出演CM第1号の撮影も終え、「風太ビジネス」はすでに走り出している——。
風太が新聞やテレビで取り上げられ始めてまだ2週間ほど。広島や横浜、静岡などの動物園も「こっちが元祖」「うちのは歩く」と次々と名乗りを上げた。
これに対し、「レッサーパンダが二本足で立つのは解剖学的にも当たり前。あの取り上げ方は『見せ物』です。来年の今日、どのくらいの人がこのブームを覚えているでしょうか」と先月末、HPで苦言を呈したのは旭山動物園の坂東元・副園長だ。
「動物園の役割は、動物の生き生きとした姿のすばらしさを伝えること。立たないレッサーパンダには価値がないのか、と言いたくなる」と同副園長は語る。
一方、千葉市動物公園の秦舜二園長は商標登録の狙いを「風太の名前や姿が変なところで使われないようにするため。金もうけではない」と話し、批判は心外といった様子だ。
旭山動物園には、緊急メッセージに対する意見がメールや電話などで寄せられているが、賛否は拮抗(きっこう)しているという。
そもそもレッサーパンダはワシントン条約で原則、商業取引が禁じられている希少動物。商標登録は商業利用にならないのか。経済産業省農水産室は「商標取得が『商業』にあたるかは、前例がないのでわからない」と首をひねる。
この風太論争について、日本大学生物資源科学部の村田浩一教授(野生動物医学)は「行政改革で動物園の独立採算制が進み、来園者数などを重視せざるを得なくなっている」と指摘。「面白さだけに終わらせず、そこから学びの部分に引き込む工夫がなければ、本来の動物園の役割を果たせない」と注文を付ける。
今月1日、風太は初のCM撮影に臨んだ。エサで立ち姿を誘導しないなど条件付きの撮影だった。このほかにもCM出演や写真集作製など計12件の引き合いが企業からあり、風太グッズ作製も予定されている。
エリマキトカゲやウーパールーパーなどブームを巻き起こし、あっという間に忘れられてしまった動物は多いが、さて「風太」は——。
(読売新聞) - 6月4日18時56分更新
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