2005年05月30日(月) 00時00分
悪質商法から守れ 被害相談件数が急増(朝日新聞・)
ヤミ金、架空請求、点検商法—悪質商法への苦情の急増を受けて、盛岡市が「悪質商法に負けないまちづくり」事業を始めて1年になる。同市消費生活センターへの相談は00年度の1437件から04年度は6202件と4倍以上に激増。なかでも10代や70歳以上のお年寄りの、「消費弱者」がターゲットになっている。相談の実情から、業者の「わな」に陥らない方策を探った。(吉田 拓史)
消費生活センターへの10代の相談の9割をしめるのが不当請求トラブルだ。その相談を寄せた、中学2年の男子生徒(13)とその家族に体験を聞くことができた。
生徒が5月中旬に電話した先は、友人から教えられた番号で、「アダルト向けの電話サービス」と説明されていた。性情報に関するものだと生徒は思い、興味本位からかけたのだという。
しかし、生徒は1分程度で電話を切った。
「NTTの電話サービス」を名乗る男から電話があったのは3日後。
対応した母親に男は「一度電話をかければ会員登録され、6万円かかる。そういうメッセージが流れたはず」と話し、メッセージで知らせた期限までに支払いがなかったなどとも説明し、「延滞料」名目などを加え、「総額9万6千円を支払え」と言ったという。
母親は翌日、盛岡市消費生活センターへ相談。センターでは、「電話をかけただけで会員登録の契約が成立するなどというのは違法で、明らかな不当請求」と説明し「支払わないように」とのアドバイス。母親が請求を無視したところ、その日に男から「金が振り込まれていない。それなりの業者を使って学校や職場に行く」という脅し文句が留守電に入っていた。
その脅し文句も無視したが、その後、電話はないという。
中学生、高校生が抱く性情報への関心の高まりにつけこんだ「商法」とセンターは分析する。
同様の不当請求トラブルで10代からの相談の大半が、アダルトサイトへのアクセスなど、携帯電話の使用によるものだった。日本PTA全国協議会が5月にまとめた調査によると、携帯電話を保有しているのは小学5年生10・3%、中学2年生35・1%で、年々増加傾向にあることもトラブルの増加要因と見られる。
高齢者は、訪問販売や点検商法の被害に遭うことが多い。認知症のお年寄りや近所付き合いのない、孤独な環境につけこむ例が目立つ。
70代の男性から「金がなくて困っている」との相談がセンターにあった。相談員が男性の自宅を訪問したところ、居間は布団や衣料品で埋まっていた。
床下などの補修工事などもされており、3年間で80件、合計800万円の契約が交わされていた。
男性は相談員に「無理やり押し付けられた」としか答えなかった。70代の妻と2人暮らし。ともに軽い認知症の疑いがあった。
高齢者を孤立させず、周囲が見守ることが大切だという。
悪質商法に関して現在、最も対策が求められているのは、子どもたちとお年寄りだ、と消費生活センター主査の吉田直美さんは強調する。
「悪質商法に負けないまちづくり」事業ではこの1年、「悪質商法」の実例についての講座活動に力を入れてきた。
講座は、学校や企業、町内会などの地域を訪問して実施するもので、01〜03年度は年70〜80回程度だったが、「負けないまちづくり」事業を始めた04年度は204回。今年度は4、5月の2カ月で予約分も含めて既に70回にのぼる。
今年度に入り、同センターへの相談件数は前年同月比で3割ほど減っている。ただ、吉田さんは「件数だけで判断はできない。新しい手口のためにだまされたことを気づけない場合や、泣き寝入りの例もある。不審だと思ったときは迷わず、センターに相談してほしい」と話している。
●悪質商法に負けないまちづくり
盛岡市消費生活センターでは、安心、安全な市民生活を目指すために悪質商法の被害に遭わないよう具体的な事業に取り組んでいる。町内会や市民団体らと連携し、市民同士が日常から声を掛け合って互いに見守ることで「被害の防止」、職場や学校、地域などで消費者講座を実施し、悪質商法の手口や対抗策についての「学ぶ機会の提供」、専門相談員や行政、警察と連携し、悪質業者への対応、指導を行う「被害の回復支援」が事業の柱。
(5/30)
http://mytown.asahi.com/iwate/news02.asp?kiji=8009
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