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2005年05月25日(水) 11時31分

中国版PHS「小霊通」とは? 実際に買って試すITmediaモバイル

UT227。サイズは43×79×19.5ミリで、重さは65グラムと小型だ。付属のマニュアルは中国語だが、機能は単純なので操作に悩むことはない 写真:ITmedia    日本でPHSといえば、ウィルコム以外の事業者は撤退が相次いでいる。しかしお隣中国では、中国版PHS「小霊通」のユーザーが急増中だ。

 中国の携帯電話ユーザー数は年々増加しており、2005年3月末時点で約3億5000万に達している。中国版PHSである小霊通の普及も目ざましく、現時点では中国全土で6000万を越える。

 なにかと注目を浴びる小霊通を、現地で実際に購入してみた。

●「小霊通」とは?

 小霊通(しゃおりんとん)は日本で開発されたPHS技術を使ったサービスで、インフラのベースには固定電話回線のネットワークを利用している。それほど多額の設備投資がいらないこともあり、1997年に地方都市で試験サービスを開始して以来、あっという間に中国全土にサービスが広がっていった。

 小霊通は“固定電話のコードレス版”という位置づけであり、中国では移動体通信とはみなされていない。事業を行っているのは、中国の固定電話事業者の「中国電信」「中国網通」の2社。実際の事業は各都市レベルで行われており、たとえば上海市であれば「上海市電信有限公司」(上海電信)がサービスを行っている。

 中国全国を通じての統一サービスは行われておらず、都市間の国内ローミングもできない。たとえば上海電信で購入した小霊通を広東省に持って行っても、広東電信のネットワークでは利用できないのだ。小霊通はあくまでも固定電話の一種であり、中国の通信政策上、同一都市での利用しか認可されていない。不便なようだが、都市を移動して利用するユーザーはそもそも小霊通ではなく携帯電話を利用するので、実用上は問題になっていないのだろう。

 中国の携帯電話は、米国のように発着信共に課金される。しかし小霊通は発信課金のみで、着信は無料だ。通話料金も携帯電話より格安になっている。端末もモノクロ液晶、単機能が中心のため安く、このため低所得層でも気軽に購入、利用できる。小霊通が中国で普及した最大の理由は、このコストの安さにほかならない。

●小霊通をプリペイドで購入する

 中国に住所を持たない旅行者や出張者が、小霊通を購入できるのか? 上海市内にて上海電信の支店を訪れると、奥のほうに「小霊通」のコーナーがあった。

 中にはUT Starcom、中興(ZTE)、華為威(Hua Wei)、普天(Pu Tian)など、中国内でおなじみの中国国産メーカー端末が並んでいた。話を聞くと「外国人でもプリペイドで購入できる」という。

 購入できるが、1つ問題があって「ここは代理店のため開通まで2〜3日かかる」とのこと。上海電信の支店内なのに、代理店が入っている……というのも不思議だが、上海電信が場所を貸して代理店に営業をさせているようだ。

 「即日利用開始したいのならば、上のフロアにある上海電信のカスタマーセンターで直接購入すればよい」とのこと。さっそくエスカレーターを上がり、カスタマーセンターの受付で「非居住の外国人だが小霊通を買いたい」と話すと、すぐ横にある小霊通のコーナーへと案内された。

 一階の代理店には5〜6機種の端末が販売されていたが、カスタマーセンターではUT Starcomのモノクロ液晶端末「UT116」と「UT227」の2機種のみしかないという。できれば最新のカラー液晶端末を購入したかったが、通話にしか利用しないし、ぜいたくは言ってられない。シンプルなストレートのUT116が350人民元、折りたたみ式で小型のUT227が490元とのこと。どうせ買うならスタイリッシュな機種、ということでUT227のほうを選択することにした。

 端末を決めたら、今度はプリペイド契約を行う。契約にはパスポートと上海市内の住所、固定電話番号が必要とのこと。旅行者のような非居住者は、ホテルの住所でOKとの話だった。

 しかし今回は上海居住の人に同行してもらっており、上海電信の担当者が言うには「その上海居住者の住所と電話番号で登録してほしい」とのこと。電話番号所有者の名前や身分証明書を確認することはなく、あくまでも登録情報として必要なだけなのだが、上海居住者の知人がいる場合そちらの住所、電話番号が優先されるのかもしれない。

 担当者が申込書に必要事項をすべて記入してくれたため、申し込みはスムーズ。「国内長距離電話」「IP電話」「国際電話」のオプションはすべて契約しておいたほうが便利だ(登録無料)。なお、この担当者は英語は通じなかった。現地では中国語(北京語か上海語)ができる人と同行したほうが無難だろう。

 電話番号は、いくつかの候補の中から好きなものを選べる。電話番号体系は、市内の固定電話と同じ8桁。市内で小霊通の番号に電話をかける場合、上海の市外局番「021」も不要だ。中国の携帯は「138」などではじまる12桁の番号だから、小霊通はあくまでも固定電話の延長であることが分かる。

 契約時にかかる費用は以下の通り。

・初期登録費 100人民元
・手続費 10人民元
・最初の通話料充填分 100人民元

 端末代金と合わせて合計700人民元、約1万円で上海の小霊通を購入できた。購入後、さっそく電源を入れてみる。

 電源を入れると、すぐに画面にアンテナが立つが実際に開通するのは2〜4時間後。なお、日本のように開通してから再度受け取るのではなく、未開通状態のまま渡されるため、時おり発信テストを行って開通されたかどうかを確認する必要がある。実際は開通時に上海電信よりいくつかのSMS(ショートメッセージサービス)が届いたので、それで開通を知ることができた。

 料金体系は、プリペイド方式の契約回線というもの。あらかじめ端末に金額を入れておき、そこから毎月の料金が引かれる。毎月かかる費用は基本料金44人民元(約570円)/月となる。この通話料金には、50人民元ぶんの市内(上海電信の管轄区内)無料通話料が含まれている。

 プリペイドの場合、市内通話は0.2人民元/分なので上記基本料金内で250分間の通話ができる。なおポストペイド契約ならば料金は1/3となり、さらにリーズナブル。着信料金も無料のため、まさに「移動できる固定電話」感覚だろう。

 そのほかの料金は以下の通り。

●上海電信のプリペイド料金(単位は人民元)

  —   料金
  市内通話   0.20/分
  国内長距離   0.07/6秒(0.04/6秒)
  国際電話   0.80/6秒(0.48/6秒)
  IP国内長距離   0.30/秒
  IP国際電話   米国など2.4/分、日本など3.6/分
  SMS   0.08/本

 プリペイド購入した場合、残高がなくならないよう適時残高を追加する必要がある。残高追加には小霊通用のバウチャー券か、上海電信の電話カードが利用できる。上海電信の場合は端末から「96088」にダイヤルすることでサービスセンターにつながるので、ここで音声案内にしたがって残高確認や残高を追加できる。音声サービスは中国語と英語が用意されているため、外国人でも問題なく利用できるだろう。

●エリアの狭さがネックだが料金は魅力

 開通後、さっそく市内に出て小霊通を使ってみた。固定電話や携帯電話に通話テストしてみたところ、わずかなノイズが入るようだが十分使える品質だ。歩行中や車での移動中も、利用は可能。日本への発着信もテストしてみたが、特に問題なく通話できた。

 音声通話以外にSMSも利用できるが、SMSは小霊通同士か、中国の携帯電話との間でのみ利用可能。国際SMSは利用できない。

 一方、大きなビルやショッピングセンター内に入ると電波の入らないエリアが多いように感じた。エレベーター内に入ると、たいてい電波が切れてしまう。地下鉄も地上の入り口を入ってすぐに無電波状態となる。また上海の国際空港、浦東空港へタクシーで向かったところ、時速100キロの車中からは発着信が困難なこともあった。

 さらにいうなら、週末の夕方などは回線が混雑しているのか、アンテナが立っているのに発信しても「ツーツー」と接続できずに話中になってしまったり、通話中にすぐ切れてしまうこともあった。このあたりは日本でPHSが開始されたころと状況は似ている感じだ。

 上記のような状況のため、上海市内など都市部では、小霊通だけですべての通話をこなすのはやや難しいかもしれない。プリペイド購入できるのは旅行者向きだが、、訪問先や買い物先で常に使えるか分からないという不安もある。一方、地方都市ならば電波の障害物も少なく、地下施設も少ないことから小霊通を携帯電話代わりにもできそうだ。

 上海市内を歩き回ってみると、小霊通と携帯を両方使い分けている市民の姿も目にした。たとえば携帯電話に電話がかかってきた場合、着信料金がかかるので小霊通のアンテナが立っているのを確認し、相手に「こちらにかけなおして」と話すという具合だ。確かにこれなら、着信無料で長電話できる。また携帯電話はSMS用にして通話は小霊通で、という姿も見かけた。都市部では携帯電話と小霊通を組み合わせ、両者のいいとこ取りして使うのが賢い使い方のようだ。

■さらに画像の入った記事はこちら
  http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0505/24/news089.html

http://www.itmedia.co.jp/mobile/
(ITmediaモバイル) - 5月25日11時31分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050525-00000017-zdn_m-sci