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◇不安あおり、まんまと契約
埼玉県富士見市で、認知症(痴呆)の老姉妹が16社ものリフォーム業者に食い物にされ全財産を失った問題は、故郷に老いた親を残す家庭や行政関係者など、多くの人に衝撃を与えた。少子高齢化の進展で、全世帯数のうち高齢者世帯が1700万件と3分の1を超え、しかもその8割が一戸建てに暮らす日本。この姉妹の悲劇は、いつ、あなたの身近で起きても不思議ではない。現状と対策を緊急報告する。【扇沢秀明】
姉妹の住む家は、築約30年。「床が腐ってるかもしれない」。近所の人は以前、姉妹がそう話すのを聞いた。もともとそう思っていたのか、業者に吹き込まれたのかは分からない。ただ、国民生活センターの河岡優子調査役補佐は「お年寄りに『このままでは家が腐る』などと不安をあおり、契約させるのはよくある手口だ」と指摘する。この思いに16社がつけ込み、約5000万円分の工事を繰り返した。
市の依頼で姉妹宅を調べた1級建築士の石田隆彦さんはあきれかえった。「床下に取り付けられた換気扇は約30個。延べ50平方メートルの小さな家なら三つで十分。天井裏は補強金具があふれ、中にはネジで留めていないものもある」。しかも、領収書に書かれた部品代や工事費は、市場価格の2倍から10倍だという。
姉妹が認知症であるうえ、福祉を拒み、近親者も近所づきあいもほとんどなかったことが、被害を大きくした面はある。が、たとえ判断力があっても、業者のセールスは巧妙だ。国民生活センターへの相談事例から、最近の手口を見てみよう。
●無料点検商法
阪神、新潟、福岡と相次ぐ大規模地震で増えているのが「耐震性」への不安をあおり「点検」を口実に入り込む手口だ。無料なら見てもらってもいいか、と思う心理につけいる。役所や消防署員などを装う場合もある。
60歳代の男性は、「無料で耐震診断をする」と訪れた業者がビデオで屋根を撮影。「瓦がずれている。落ちて通行人に当たり、けがをさせたら大変。今なら安くできる」と勧誘され、約300万円のローンを組んだ。河岡調査役補佐は「ビデオが本当にこの家を撮ったものか不明。映像を見せて臨場感を持たせ、『他人に迷惑を掛けてはいけない』と思う高齢者の心理につけいる商法だ」と言う。
また、70歳代の男性宅を訪れたのはシロアリ駆除業者。家を見て回った後「床下のコンクリートにひびが入り、家が傾いている。地震があったら危険だ」と工事を迫った。男性は別居している子供に相談し、子供が断ったが、業者は勝手に工事を進め、男性は結局契約書に判を押した。
●見本工事商法
「リフォーム後の家をチラシのモデルに使わせてくれれば、大幅に値引きする」などと言って勧誘する例も増えている。同様に「キャンペーン期間中なので、今だけ安くできる」など言う「期間限定商法」も目立つ。50歳代の女性は「見本になれば440万円の工事を295万円に値引きする」と勧誘された。しかし、センターが明細書で180万円となっていたシステムキッチンの工事費を別の業者に問い合わせると、80万円だった。
◇相談の6割、60歳以上
もちろん、まともに仕事をしている業者の方が多いのは、言うまでもない。が、詐欺まがいの被害が多発しているのも、残念ながら事実だ。
同センターに寄せられる訪問リフォームの苦情は、99年度の5532件から▽00年度・6004件▽01年度・7037件▽02年度・9146件▽03年度・9507件−−と推移。04年度に初めて8383件と減少したが、河岡調査役補佐は「振り込め詐欺や架空請求に追われ、相談が間に合わなかっただけ。実態は減っていないと思う」とみる。
相談者の平均年齢は63・7歳(04年度)。最多が70代の2226件(27%)で、以下、60代・1797件(21%)、80代・1108件(13%)と続き、60歳以上で6割を超える。契約金額は平均163万9000円にもなる。
「判断力が衰えているが、ある程度の蓄えがある高齢者」を、悪徳業者が狙い撃ちにしている実態が浮かぶ。
ではどう対処すればよいのかを、次回探る。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/katei/news/20050519ddm013100130000c.html