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「法輪功」「天安門」「台湾」「チベット」…。
報告書によると、中国当局が決めたこういった単語を含むサイトやアドレスに接続できなくするのが検閲システムだ。
当局が神経をとがらせるであろう単語それぞれについて、検索エンジンで上位百位に入るサイトを対象に、中国国内から接続できるかを調査した。
その結果、中国語サイトで接続できなかった率が高かったのが「中国労働党」で93%。「ナインコメンタリーズ(九評)」「天安門大虐殺」が90%でそれに続く。「ナインコメンタリーズ」は、台湾、香港、日本などで発行されている週刊華字紙「大紀元時報」による中国共産党の批判的論評だ。
■「エラー」表示で隠ぺいも巧妙に
非接続率をその他の微妙な政治問題で見てみると、「法輪功」は44%、「法輪大法」で73%に上った。「チベット」は9%だが、「ダライ・ラマ」になると54%に跳ね上がる。なぜか「台湾」(8%)「台湾独立」(25%)には寛容だ。
何を接続妨害するかで、かえって中国当局の関心度を「裸」にしているともいえる。妨害は、中国のネットワークの「幹」の部分でも「枝」の部分でも行われている。
同様に検閲体制を敷く他国の場合は、検閲で閲覧できなくしたことを利用者に明らかにするが、中国の場合「タイムアウト」「エラー」など技術的問題を装い、それが検閲による規制だとは利用者には分からないようにしてある。
それらの「洗練された」検閲体制は、シスコシステムズやノーテルネットワークス、サンマイクロシステムズといった、米国のIT企業の技術に支えられていると報告書は指摘する。特にシスコはネットウイルスなどを除去するシステムを中国に販売している。この技術でウイルスの代わりに単語をはじくようにしておけば、検閲に応用可能だ。
企業側は「単に技術を売っただけで、顧客がどう使うかまで関与できない」としているが、シスコについては内部告発者が「中国のために特殊なローター(データの送信経路を決定する装置)を開発した」と明らかにしている。
■プロバイダーの免許取り消しも
二〇〇四年八月には、中国人ハッカーが中国語、英語合わせて九百八十七に上る単語の一覧表をネット内で発見し、掲示板で暴露した。少数民族の独立運動や法輪功、共産党幹部の名前などだ。調査では、このリストに掲載された単語を中国国内の三つのプロバイダーのブログで使用してみた。二つのプロバイダーはそれぞれ十八語、十九語に反応し「*」印に置き換え、単語の使用ができなかった。残りの一つは三百五十語に対し使用の警告を出した。
法的な締め付けについても報告書は指摘している。プロバイダーは、顧客管理などを義務づけた法に違反すれば、免許の取り消しやスタッフが逮捕される可能性がある。〇一年にはインターネットカフェの集中的な取り締まりで、八千店が閉鎖を余儀なくされ、遼寧省だけで五千店で警察が検閲ソフトを導入させた。
この報告書で指摘しているように、ネット上での規制は技術的に可能か。
「難しいことではない」と話すのは、インターネットジャーナリストの森一矢氏だ。
「中国は規制環境をつくりながらネットを広めてきており、海外サイトなど、ピンポイントで特定のサイトに接続できないようにしている。ネットはどこからでも接続できるように見えるがそうでもない。日本なら海外サイトにつながる東京と大阪、沖縄などにある回線を通らないと、接続しない。そうした回線に関所を設けておけばよい。検索サービスでは、事業者に対し特定の言葉を規制するようにしておけばできる」
実際、今週末のデモ再燃を警戒して、デモ参加を呼びかけるような書き込みがあるようなサイトは、閲覧が規制されているという。「十六日午前九時、天安門広場に集合」とデモを呼びかけたサイトは、翌日から閲覧ができなくなった。
■人口の1割弱の9400万人が利用
中国のネット利用者は昨年末で約九千四百万人といわれる。人口の一割に満たないが、ブロードバンド(高速大容量通信)利用者は約四千万人といわれ、当局も無視できない。
「中国では二〇〇〇年に、ネットなどを規制する基本的な法律ができた。やってはいけないこととして、国家の安全と社会の安定、共産主義社会の秩序を乱すことが項目として含まれている。その基本法をもとに、規制の細則、罰則が決まっている。例えば、中国内でもヤフー(検索エンジン)が運営されているが、『国の安全を脅かす』『党批判』と政府が判断したサイトは、排除しなければ運営ができない」
ネット規制の状況を話すのは国際社会経済研究所の原田泉主席研究員だ。
■ネット警察存在 3万人体制説も
検閲を行っている組織について「中国の国家情報化指導グループで、その下に情報産業省、地方の公安部、国家コンピューターネットワーク不正アクセス防止センターなど、いろいろな機関がある」と説明する。十四日付米ワシントンポスト紙電子版も「確認はできなかったが、監視する『インターネット警察』は三万人いるともいわれる。関与する政府機関は十一ある」と報道した。
一方、中国のネット事情に詳しい関係者も「ネット内の掲示板などは、共産党批判の内容は規制されるが、それ以外は事業者の自主規制的な部分もある」と話す。党中央宣伝部によって厳しく規制されているテレビ、ラジオ、新聞に比べ、インターネットの規制は緩い側面がある。ネットの特性に起因するようだ。
森氏は「例えば『あいうえお』という単語をブロックすることはできるが、『あ▽い▽う…』と打てば、ブロックされない」と明かす。先の関係者も「中国からニューヨーク・タイムズのようなサイトは見られないことになっているが、国内で見られるサイトを迂回(うかい)して行くことはできる」と抜け道もあるという。
インターネットの普及は民主化を進めるとみられているが、政府の首を絞めることにはならないだろうか。「ネットの導入は共産主義の崩壊の第一歩」と、森氏は痛烈だ。原田氏も「ベルリンの壁が崩壊したのも東西の情報交流から。ネットを通じて、海外からの情報が入るようになれば、民主化が進む一つのテコになるのでは」と話す。
だが、先の関係者は思案顔だ。「ネット上でも党批判ができない、ゆがんだ自由の中で、市民の不満のはけ口は、外国、日本に向かいやすい。本来の民主化に寄与することにはならないのではないか」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050416/mng_____tokuho__000.shtml