2005年03月31日(木) 20時13分
<偽造カード>生体認証の規格めぐりつばぜり合い 金融機関(毎日新聞)
偽造キャッシュカードによる不正引き出し問題を受け、大手銀行を中心に現金自動受払機(ATM)などに静脈の形などで本人確認する生体認証を導入する金融機関が増えている。生体認証には、「手のひら」や「指」の静脈による認証などがあるが、3月に郵政公社が「指」の導入を決めたほか、三井住友銀行やみずほ銀行も「指」の導入方針を発表。昨秋から「手のひら」を導入している東京三菱銀行との間で、規格をめぐるつばぜり合いが本格化している。
偽造キャッシュカード対策は、磁気に比べ記録できる情報量が大きいIC(集積回路)カードへの移行と、生体認証の導入が有効とされている。ICカードは地方銀行や信用金庫などを含む多くの金融機関が導入準備を進めているが、生体認証はシステム費用がかさむこともあり、導入を検討する金融機関は一部に限られていた。ところが今年1月、キャッシュカード偽造団が警視庁に摘発されたことで偽造カード問題への社会的な関心が高まり、生体認証が一躍脚光を浴び始めた。
生体認証のうち、手のひら認証は静脈の情報量が多い分だけ確実に本人確認できるという利点がある。一方の指認証は読み取り範囲が狭いものの、扱う情報量が少ない分だけ迅速に処理できるメリットがある。
ただ、双方の方式には互換性がないため、たとえば手のひら認証を採用している銀行の預金者は、指認証を導入している銀行のATMは使えない。預金者にとっては、口座を開設している金融機関以外のATMで現金を引き出せないケースが出てくることも想定される。このため、生体認証の導入を検討している中小金融機関などからは、顧客の利便性を考慮した規格統一を求める声が高まっている。
しかし、手のひら認証は富士通、指認証は日立製作所が基本技術を開発しており、「規格競争には、大手行間だけでなく、システム開発会社同士の競い合いという側面もあり調整が難しい」(大手行幹部)のが実態。全国銀行協会も「生体認証の技術は揺籃(ようらん)期。各メーカーが開発した独自の認証技術を市場に提供して競争することで、技術力の向上につながると考えている」(西川善文会長)と、業界標準化は時期尚早との立場だ。
郵政公社が採用を決めたことで、現時点では指認証に対応するATMの台数が手のひら認証を大きく上回りそうだが、信用金庫業界では手のひら認証導入の動きが広がっており、「手のひら」と「指」の標準化競争はまだしばらく続きそうだ。【斉藤信宏】
(毎日新聞) - 3月31日20時13分更新
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