2005年03月29日(火) 10時45分
【香港】類似社名横行、日系電子業界が救済申請(NNA)
日本のエレクトロニクス・情報技術(IT)業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)は、「香港で日本の大手電機メーカーの類似社名があまりに横行している」として、今年4月から始まる「知的財産権侵害調査制度」に基づく救済を申し立てる方針だ。JEITAが28日、NNAに対し明らかにした。経済産業省が審査の結果、制度適用を認めた場合、日本政府として正式に香港政府に改善を求めることになる。
JEITAは松下電器産業、日立製作所、東芝、三洋電機について、香港での類似社名登記が深刻として、経済産業省に同制度に基づくブランド保護を要請する方針。「香港三洋国際集団」など、香港ではこの4社だけで110社を超える類似社名が登記されているという。こうした香港企業は中国本土で類似社名を使って製品を生産し販売。本土の消費者はこのようなニセ日本メーカーの製品を本物の日本メーカーのブランド品と誤解して購入する恐れが高く、正規の日本メーカーは売り上げと利益で打撃を受けている。ニセ日本メーカー製品の故障や事故といった苦情が正規の日本メーカーに持ち込まれるケースも多く、ブランドイメージも傷つけられている。
■相談の段階=JEITA
JEITAによると、現段階では制度がまだスタートしていないため、経産省に対し非公式に「業界として困っているので、日本・香港両政府間で問題にしてほしい」と相談している状態。類似社名は本物と紛らわしいものがたくさんある上、今後ほかにも広がっていく恐れ大と懸念している。
類似社名が公然と横行する原因として、JEITAは香港の企業登記手続きの簡単さが問題とみている。香港の現行の会社関係法令では、実在する社名やブランドと類似した社名を使って新しい企業の設立申請をしても、企業登記処はそれを理由に却下することはない。さらに被害企業が類似社名登記の取り消し訴訟を起こして勝訴しても、類似社名を強制的に抹消する制度はないため、被告が自主的に抹消手続きを行わない限り、類似社名の登記は残ってしまうという問題もあり、取り消しを求める日系企業と類似社名企業の間でいたちごっこが続いている。
■松下「勝訴後も横行」
ブランド保護申し立て対象4社のひとつ松下電器は、香港の類似社名「香港鬆下国際(Hong Kong Parasonic Appliance International)」(実質的な本拠は広東省)の使用禁止などを求めて訴訟を起こし、2002年6月に香港高裁で勝訴した経緯がある。同社広報は28日、NNAの取材に対し、「02年の勝訴後も、香港で類似社名横行が続いているのは事実」と述べた。三洋電機の広報も、類似社名問題についての情報はつかんでいるとコメント。知的財産権関連では、中国当局の協力を得て、これまでに偽ブランド事例14件を摘発していると語った。エアコンやCDプレーヤーなどが被害に遭ったという。
一方、東芝の広報は「当社として、今回の申し立ての音頭を取るようなことはしていない。香港を含む中国で、当社のビジネス規模と売り上げが大きいことが、対象に入れられた背景ではないか」と語った。
■経産省も「深刻」と認識
経産省の政府模倣品・海賊版対策総合窓口は「来月の制度スタート後、JEITAから必要な書類を受け取って規定に則り審査し、申し立てから45日以内に適用の是非を決定することになる」と説明する一方、同省としても、香港での類似社名横行は深刻と受け止めていることを明らかにした。適用が決まれば、日本政府として香港政府に対し、商標権侵害の実態調査や類似社名の登記拒否、同一・類似社名の登記強制抹消制度創設などを求めることになる。
香港政府商工・科学技術局のスポークスマンは「苦情があれば対応する」とした上で、「商標登記には地域的制約がある。企業が自社の社名や商標を防衛したければ、関係する国・地域で登録すべき」などとコメントしている。
(NNA) - 3月29日10時45分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050329-00000011-nna-int