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■なぜ私が…
「最初は(不祥事への)義憤の念で払わない人だった。それが、隣の人は払っていないのに、なぜ私が…と、なっている。(金融機関からの引き落とし中止の)事務手続きをしてまで、止めたくなっている」
委員会の冒頭、質問に立った野田聖子元郵政相は、不祥事がパンドラの箱を開けたように出てくると例えた上で、不払いの“質”の変化に言及した。橋本会長も「払わなくても済むんじゃないかとの考え方が出ている」(今月三日の定例会見)と分析する。不払いの理由が、不祥事への反発から、不公平感の広がりに変わってきている。
不払い七十万件とすると、初の減額予算となった二〇〇五年度は、さらに四十億円の減収となる。そうなった場合、和崎信哉理事は「経費削減で対応せざるを得ない」とする。橋本会長は「納得される番組づくりが改革の基本」と言うが、その制作費を削らざるを得ない事態も想定される。
■罰則規定も
受信料の不払いは、罰則はないが、放送法違反。NHKは二月中旬から、全国の職員約六千二百人を動員、職種に関係なく、土、日曜日を中心に不払い世帯を訪問し、地道に再生を訴えている。
また、新年度からは、視聴者参加番組を大幅に増やし、「みなさまのNHK」をアピールする計画。永井多恵子副会長は、東京ドームで開かれた「世界らん展」で、来場者に対しNHKへの意見を“突撃取材”。井戸端会議風の模様を放送して、親しみやすさを演出した。
ただし、不公平感が不払いの理由では、橋本会長がいくら「信頼回復」を叫んでも空回りになりかねない。
麻生太郎総務相は、「善意だけで成り立つか」と、九日の参院予算委員会で、罰則規定導入の可能性も示唆している。
■有料化
一方、デジタル放送が普及すると、徴収法そのものが変わってしまうとの声もある。技術的に、支払わないと視聴不可能にすれば、公平性は保てるというわけだ。
十五日の総務委員会でも、河合正智氏(公明)が「デジタル放送を携帯電話で受信できるなら、世帯単位の(受信料)適用は難しい。CS放送のように、見た番組にお金を払う『ペイ・パー・ビュー』とか、スクランブルをかけておいて解除の段階で課金するなど、いろんな形態が考えられる」と指摘。橋本会長は「徴収方法も、新たな視点で検討する」と答弁した。
しかし、受信料の徴収方法によっては、災害報道をはじめ、あまねく国民に情報を提供する公共放送の存在意義そのものが問われる。受信料制度の根幹が揺らぎ始めた。
■識者ら厳しい見方
大東文化大・岡村黎明講師(メディア論)の話 これまでNHKの番組や放送活動に一定の評価をしてきた人の中に、批判的な空気が出てきた。矛先は、受信料制度、経営委員会のあり方など、組織の根本的な問題に向けられている。
NHKは受信料に支えられている公共放送で、民放とは違うと言ってきた。罰則を設けたら、自己矛盾に陥る。事業拡張路線を見直し、受信料がカバーする範囲を地上波とラジオに限り、(有料感覚になじみやすい)BSを切り離してみてはどうか。一人当たりの受信料も安くなり、理解が得られるのではないか。
上智大学新聞学科・音好宏助教授(メディア論)の話 罰則がないのならと安易に払わなくなった人がいるのは確か。一方でNHKに、ある一定の信頼を持つ人もまだ多い。しかし、何らかの手を打たなければ、不払いが雪崩現象を起こし、制度は崩壊するだろう。
橋本会長は信頼回復のための改革を明確に打ちだし、矢継ぎ早に実行しなければならない。(転居が増える)三、四月は、受信料徴収において大事な時期。契約を継続するか打ち切るかを判断する時で、正念場だ。
罰則の検討の余地はある。しかし、まずわれわれが必要とするNHKの姿を議論するのが重要だ。議論によって日本の公共性を考えることにもなる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050316/mng_____kakushin000.shtml