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SFC大学院生、松村太郎さんは、旅行でニューヨークの地下鉄に乗った時、ケータイマナーの日米間の違いに気づいたという。だれかケータイで話す声が聞こえた時、彼は思わず声の主を探した。しかし、車内で声の主を探したのは彼一人だった。日本では、車内で無遠慮にケータイで話をすることはマナー違反だが、どうやら米国では違うらしいのだ。
カリフォルニア大に留学している大村智之さんは「通学バスの中では、みんなエンジン音に負けないくらいケータイで大きな声で話をするし、米国の学生も『バスは電話をするところでしょ』と言っている」と指摘する。南カリフォルニア大の学生、ラッシェル・コーディさんも「ロサンゼルスの公共交通機関では、いつもだれかケータイで話をしているが、だれも気にしない。もし大声で話をしたら視線を送る乗客はいるかもしれないが、注意することはないだろう」と言う。
米国が特殊というわけではない。中国から来たSFC留学生、華金玲さん(小檜山研究室)も「中国では、車内でもみんな大声でケータイで話すし、乗客もそれを気に留めない」と話している。
では、日本の状況はどうか。小檜山研究室は、東京と大阪の通勤電車内で二年半前からフィールド調査を行っている。例えば、山手線に乗り、車両内でケータイを使った人の人数を数えたり、周囲の反応を記録したりしている。その結果、一車両で、だいたい三十分に一人か二人、通話をする人がいた。メールやウェブの利用者も含めると、ケータイを手にした人は三十分間で平均二十八人いた。ケータイは、日常の空き時間を埋める役割も担っているのだ。
周囲の反応としては、「座っている人のケータイに着信があると、隣と向かいの人がちらっと視線を向ける。着信を受けた人は立ってドア近くに移動、雑誌で口元をおさえながら手短に話をする」などが、都内の比較的空いている車両での一般的なパターン。神奈川県海老名市の高校三年生は、私たちのインタビューに対し「車内で着信音がなると嫌ですね。ケータイメールはひまつぶしによく打つけど、それはたぶん大丈夫。もし自分が電話に出る場合は悪いなあと思って、小さい声で話す」と言う。
乗客が少ない方へ移動したり、口元を隠したりしてケータイで話をするという行為は、「周囲に配慮している自分」を車内の乗客に表示する行為だ。これをしないと、みんなで保っている均衡が崩壊する。ただし、このマナーも、夕方のラッシュアワーになると崩れる。混雑した車内では、口元を手で覆って話をしたりしないし、周囲も視線を向けたりはしない。ケータイ利用マナーは、車内状況で変化する。
ケータイで話す人をちらりと見たり、声の主を探したりする行為は、いまや日本では日常化している。ケータイマナーに対する認識は、今後も変化する可能性がある。いずれ、ケータイ通話を規制する車内のアナウンスや構内のポスターは、過去のものになるのだろうか。
■「慶応デジ組」のサイト
Http://Ktai.sfc.keio.ac.jp/digi/
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