2005年02月23日(水) 22時18分
カルテル内部告発で30年閑職、男性の賠償一部認める(読売新聞)
運輸業界の違法カルテルを内部告発して以来、会社から約30年にわたって閑職に追いやられたとして、富山県高岡市、串岡弘昭さん(58)が勤務先の「トナミ運輸」(高岡市)を相手取り、5400万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟の判決が23日、富山地裁であった。
永野圧彦裁判長は「原告の内部告発は正当で法的保護に値する。会社は報復として不利益な扱いをした」として、時効分を除き、慰謝料200万円を含む約1356万円の支払いを同社に命じた。謝罪については請求を退けた。
判決によると、串岡さんは営業担当だった1974年、トナミ運輸を含む大手業者が話し合いで運賃を高く設定し、自由な競争を妨げる違法カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会などに告発。公取委が立ち入り調査した後、業界は路線運賃などの申し合わせを破棄した。
同社は、内部告発を受けて、串岡さんを75年から教育研修所に異動させた。狭い個室に1人で隔離し、仕事は草むしりなど雑務だけ。その後、隔離はなくなったものの、約30年間、昇格させなかった。
永野裁判長は「人事権の行使は使用者の裁量的判断に委ねられるが、法令や公序良俗に反しない限度で行使されるべきで、正当な内部告発を理由に不利益に扱うことは違法になる」と認定した。串岡さんが提訴した2002年には、内部告発で雪印食品の牛肉偽装事件も発覚。「内部告発」はその年の流行語大賞のトップテンに選ばれ、串岡さんは代表で受賞した。その後も、2004年6月に公益通報者保護法が成立するなど、内部告発者を保護する動きが進んでおり、判決が注目されていた。
閉廷後、記者会見に臨んだ串岡さんは「30年間、寝ても覚めても、夢の中でも屈辱感でいっぱいだったが、今は本当にすがすがしい気持ち」と晴れやかな表情を見せ、「内部告発する人を勇気づける判決になった」とも述べた。謝罪が認められなかったことについては、弁護士と相談した上で控訴したいとした。
一方、トナミ運輸は「判決は当社の考えと相いれない部分もあり、控訴することを検討しております」とのコメントを出した。
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判決について、内部告発の相談に乗る「公益通報支援センター」事務局長の阪口徳雄弁護士は「企業内部で不正を改善する努力が不十分なケースでも、法的保護の対象と認められた点は大きい」と評価。公益通報者保護法は、告発の前に企業内部で不正をただす努力を告発者に求めているが、「今回の判決により、告発する人が増えるのではないか」と期待を示した。
(読売新聞) - 2月23日22時18分更新
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