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2005年02月01日(火) 00時00分

ダイエーも…ビール値上げ、イッキの様相 東京新聞

 大手スーパー、ダイエーは三十一日、一部の店舗でビールの小売価格を値上げしたことを明らかにした。大手ビールメーカー四社が卸売業者へのリベート(販売奨励金)を、年明けから一斉に廃止したことを受けての対応だ。すでに一部の酒店ではビールや発泡酒の価格が上がっていたが、大手スーパーの値上げは初めて。イオンやユニーは卸売価格の引き上げ要求を突っぱね、小売価格を据え置いているが、影響力の大きい大手スーパーの“陥落”が続けば、ビールの値上げは一気に加速していきそうだ。 (経済部・池井戸 聡)

■事情

 一月末にダイエーがビールを数%値上げしたのは直営二百六十三店のうち、ディスカウント店「トポス」の十六店と、食品スーパー「グルメシティ」の四十三店。もともと一般的なスーパーよりビールの価格が安かった店で、ダイエーは「これらの店以外での値上げは当面ない」と強調する。

 ダイエーがビールを値上げした理由は、大手ビール四社が一斉に卸売業者へのリベートを廃止したためだ。昨年末まで四社は、ビールを多く売った卸売業者に「ご褒美」として販売量に応じたリベートを払ってきた。だが、これは卸売業者の値引きの原資となってきたため、四社はビールの値崩れを防ごうとリベートの廃止を決断。同時に「定価」の希望小売価格も廃止し、オープン価格を導入した。

 これについて、キリンビール酒類営業本部の中村隆・営業部長代理は「ビールの価格は希望小売価格とかけ離れて下がっていた。メーカー、卸、小売りのどこももうからない状況を打開する動きだった」と説明する。

 しかしスーパー側はビールの値上げに二の足を踏む。「原料の麦の価格や税率が上がったわけではない」(イオン)ためだ。小売価格値上げとなればアサヒ、キリン、サッポロ、サントリーのメーカー四社がリベートを廃止した「特殊事情」が原因となり、顧客の理解は得にくい。

■監視 

 値引きの原資を失った卸売業者は年明けから卸売価格の値上げを要求。これを受け一部のディスカウント店(DS)では、昨年末に四千円台だった三百五十ミリリットル入り缶ビール一ケース(二十四本入り)を一月から四千三百円台に値上げした。

 それから一カ月。すでに「小売業者の七割以上が新しい価格を受け入れてくれた」(大手卸の国分)という状況になり、ビール値上げは着実に広がる。ただ、イオンの岡田元也社長は「卸とメーカーで解決すべき問題を小売りに持ち込むな」と主張し、卸からの値上げ要求を拒否。スーパー最大手の反抗は価格上昇の広がりを食い止める「防波堤」になっている。

 小売り側が今回の実質値上げに反発する背景には、メーカー四社が同時期に取引制度を変更したことがある。さらに「国税庁と公正取引委員会(公取委)もメーカー、卸と結託しリベート廃止を進めた」(首都圏のDS幹部)との指摘も多い。

 一九九九年に千三百近くあった酒類の卸売業者は一千以下に減少。年間で一兆六千億円近くに上る酒税の税収を今後も安定的に確保するには、卸売業者の「安定経営」が望ましい。これまでも国税庁と公取委は、原価を下回る「不当廉売」がないか、厳しく市場を監視してきた。

 また、家電や化粧品などでオープン価格が導入された商品は多いが「ビールのように、目に見える形で小売価格が上昇につながったケースは珍しい」(ニッセイ基礎研究所の小本恵照主任研究員)ことも、値上げへの反発につながっている。

 「コストを無視した値下げ競争をやめないと、業界の流通体系は崩壊する。これまでは無理してビールを安くしてきた」。これがメーカーや卸、国税庁などの主張だ。

 だが、二〇〇四年六月中間決算では、アサヒとキリンが過去最高の営業利益を記録。サッポロも中間期で三年ぶりに営業黒字を出している。それなのになぜ今、ビールの価格が上がるのか−。業界には消費者への明確な説明が求められている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050201/mng_____kakushin000.shtml