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2005年01月25日(火) 21時30分

NHKの海老沢会長が辞任 後任に橋本専務理事産経新聞

NHKの海老沢会長が辞任 後任に橋本専務理事


辞表を提出し厳しい表情で記者会見するNHKの海老沢勝二会長=25日夜、東京・渋谷のNHK放送センター(共同)


NHK会長に就任する橋本元一専務理事・技師長(共同)


副会長に就任する元NHK解説委員の永井多恵子さん(共同)

 NHKの海老沢勝二会長(70)は25日、一連の不祥事が招いた受信料不払い急増の責任を取り、石原邦夫・経営委員長(61)に辞表を提出して受理され、同日付で辞任した。笠井鉄夫副会長(63)と関根昭義専務理事・放送総局長(62)も同日付で辞任、首脳3人が一度に退く異例の事態となった。

 受信料不払いは経営基盤を直撃。NHKは受信料収入の減少で、約28億円に上る人件費削減に追い込まれた。

 海老沢会長は記者会見し「再生に向けた抜本的な改革の道筋を付けられたと判断。自ら辞する決断をした」と述べた。不祥事に絡む任期途中の会長辞任は1991年に国会への虚偽答弁が問題化した島桂次氏以来。

 経営委は後任会長に橋本元一専務理事・技師長(61)を任命した。技術畑出身の会長は初めて。副会長にはアナウンサー出身の元NHK解説主幹の永井多恵子さん(66)が女性で初めて起用された。ともに就任は同日付で、任期は3年。

 経営委はこの日、受信料収入が約6478億円と、史上初めて前年度比マイナスになった2005年度予算案を承認した。受信料の拒否・保留は3月末までの見込みで45万−50万件に上る見通し。

 会見で海老沢会長は「一連の不祥事により、受信料支払いの拒否・保留が増加したことは非常に残念。全容の解明と再発防止、信頼回復に向けて懸命に取り組んできた」と釈明。「視聴者・国民におわびとお礼を申し上げたい」と語った。

 橋本新会長は25日の就任会見で「青天のへきれき」とし「一人一人の職員が公共放送に従事するにふさわしい高い倫理観と、受信料は公金であるという意識を持って職務を果たしていく環境作りが重要」と抱負を述べた。

 石原委員長は記者会見で「内部、OB、外部を含め広く人材を求めた」とし、「この緊急事態を乗り切るにはトップが交代し、人心の一新を図る必要がある」と述べた。

 NHKの従軍慰安婦特番改編問題を報じた朝日新聞と会長人事の影響については「全く別個の問題」とした。

 海老沢会長は97年に副会長から昇格。3期目で任期は06年7月までだった。(共同)

 橋本 元一氏(はしもと・げんいち) 東京工業大卒。68年NHK入局。視聴者広報室副部長などを経て01年技術局長。02年理事。04年9月から専務理事、技師長。61歳。静岡県出身。

 永井 多恵子氏(ながい・たえこ) 早稲田大卒。60年NHK入局。解説委員、浦和(現さいたま)放送局長、解説主幹などを経て95年に退職。世田谷文化生活情報センター館長。66歳。東京都出身。

(共同)

 ≪海老沢会長会見要旨≫

 海老沢勝二氏の25日の記者会見での発言要旨は次の通り。

 NHKの2005年度予算と事業計画を総務相に提出し、そのあと経営委員長に対し、NHK会長の辞職願を提出し、受理された。長きにわたる視聴者、国民のご理解とご支援に心より感謝申し上げる。誠にありがとうございました。

 昨年7月以来、NHK職員による一連の不祥事が明らかになり、受信料の支払い拒否件数が増加したことを残念に思う。不祥事の全容解明と再発防止、損なわれた視聴者、国民の信頼回復に懸命に取り組んできた。今日提出した予算と事業計画で、NHKの再生に向けた抜本的な改革の道筋をつけることができたと判断し、会長職を自ら辞する決断をした。

 公共放送のNHKは日本の視聴者、国民になくてはならない文化的存在。「改革と実行」「公開と参加」の2つの経営を掲げ、聖域なき業務改革を強力に進めてきた。

 NHKは視聴者、国民の信頼によって成り立つ世界でも例のない優れた組織。多くの職員は公共放送の組織を守り使命を果たすため、体を張って懸命に業務に取り組んでいる。信頼回復のために一層の努力を積み重ねる。NHKの再生に向けてひたむきに取り組む後輩をぜひ信じていただきたい。あらためておわびとお礼を申し上げ、退任のあいさつとしたい。

 −辞任を決断した理由と時期は。

 昨年12月19日の特別番組「NHKに言いたい」で、ただ辞任すればいいのではなくて、信頼回復を図ること、再発防止に努めることをきちっと果たし、予算や事業計画を整理し道筋がついた段階で自らの判断で考えると述べている。

 −対応の失敗はどの辺にあったのか。

 ほんの一部の職員、不心得者が法令違反というか、受信料を不正に使い込んでしまった。いろんな面で厳しく指導してきたつもりだが、もう一度総点検して視聴者、国民が納得できるような改革をしなければならない。この半年間、ほとんど休みなく改革案の実効性を検証しながらまとめてきた。職員も危機的な状況の中でNHKの再生、信頼回復のために努力してくれると思っている。

 −辞任後、顧問などの職に残る考えは。

 ジャーナリズムの世界は人材が財産。48年間いろいろな方々と会い、何万、何十万の人との一期一会で成長してきた。私の経験が人材育成に役立てばと思う。同時に放送業界は世界に日本の文化を理解してもらうという面で、文化の相互理解を深める役割がある。これまでの経験を生かし文化の普及推進に当たってみたい。

 −具体的にどういう役職か決まっているのか。

 それは新会長が決めることだ。気力、体力とも十分残っているので日本のために役立ちたい。

 −退職金はいくらになるのか。

 経営委員会が決める。

(共同)

 ≪歴代のNHK会長≫

 歴代のNHK会長は次の通り。(敬称略)

 <第1代> 岩原謙三(1926年8月〜36年7月)
 <第2代> 小森七郎(36年9月〜43年5月)
 <第3代> 下村宏(43年5月〜45年4月)
 <第4代> 大橋八郎(45年4月〜46年2月)
 <第5代> 高野岩三郎(46年4月〜49年4月)
 <第6代> 古垣鉄郎(49年5月〜56年6月)
 <第7代> 永田清(56年6月〜57年11月)
 <第8代> 野村秀雄(58年1月〜60年10月)
 <第9代> 阿部真之助(60年10月〜64年7月)
 <第10代> 前田義徳(64年7月〜73年7月)
 <第11代> 小野吉郎(73年7月〜76年9月)=ロッキード事件の田中角栄邸訪問で途中辞任
 <第12代> 坂本朝一(76年9月〜82年7月)
 <第13代> 川原正人(82年7月〜88年7月)
 <第14代> 池田芳蔵(88年7月〜89年4月)=国会問題発言で途中辞任
 <第15代> 島桂次(89年4月〜91年7月)=国会虚偽答弁で途中辞任
 <第16代> 川口幹夫(91年7月〜97年7月)
 <第17代> 海老沢勝二(97年7月〜2005年1月)=不祥事引責で途中辞任
 <第18代> 橋本元一(05年1月〜)

(共同)

 ≪NHK不祥事の経過≫

 【2004年】
 ・7月20日 元チーフプロデューサーの磯野克巳容疑者が番組制作費1900万円を不正に支払い、一部を自分に返金させていたとNHKが発表

 ・23日 不正支払額は約4800万円と判明。NHKは磯野容疑者を懲戒免職処分にし、警視庁に告訴状提出。海老沢勝二会長ら役員3人を減給処分

 ・28日 編成局元幹部ら職員2人がカラ出張を繰り返し約300万円を不正に受け取ったことが発覚

 ・8月3日 架空飲食費請求で約90万円着服した岡山放送局元幹部の懲戒免職、取材経費水増し請求したソウル支局長の厳重注意処分が発覚

 ・9月7日 会長の処分を見直し、全役員処分

 ・9日 海老沢会長が国会の参考人招致で「公共放送の信頼損なった」と陳謝。生中継見送り

 ・10月26日 制作技術センター職員が外部の会社に架空請求書を出させ、制作費452万円を着服し懲戒免職。被害総額はその後1240万円に

 ・11月9日 日本放送労働組合が経営責任明確化を求める闘争方針を決定

 ・12月2日 受信料支払いの拒否、保留が11月末現在で約11万3000件とNHK発表

 ・4日 警視庁が磯野容疑者を詐欺容疑で逮捕。会長が放送で陳謝

 ・19日 海老沢会長が不祥事特番「NHKに言いたい」に生出演

 【05年】
 ・1月6日 海老沢会長が定例会見で「改革路線と予算を軌道に乗せた時点で、身の処し方を判断したい」と任期途中での辞任を示唆

 ・12日 石原邦夫経営委員長が会見で「辞任示唆と受け止めている」と発言

 ・25日 海老沢会長が辞任

(共同)

(01/25 21:30)

http://www.sankei.co.jp/news/050125/bun106.htm