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2004年12月23日(木) 00時00分

高額商品ネット詐欺が横行 東京新聞

 インターネットオークションの最大手「ヤフー・オークション」で、カーナビゲーションなどの高額商品を大量出品し、落札者から現金を振り込ませて商品を送らずに連絡を絶つ詐欺行為が相次いで発生している。京都府在住とされる出品者から納期を過ぎても商品が送られない被害者約百人は、被害者の会を結成、警察への被害届の一斉提出や、情報の共有に乗り出した。顔の見えない相手との取引には、くれぐれも細心の注意を。 (稲田 雅文)

 愛知県尾張旭市在住の会社役員の男性(52)は十一月初旬、ヤフー・オークションで京都市在住とする出品者から希望小売価格が約十八万円のカーナビを七万千五百円で落札した。半値以下で落札できたうれしさもあった半面、安すぎることを不審にも思った。

 この男性はオークション利用者の中ではベテランの域。これまで、三、四万円する商品を数千円で買ったこともある。格安で落札したときは、出品者に電話をかけて本当にその値段で良いのかを直接確認してきた。今回も出品者に電話をすると、相手は紳士的な口調で「大丈夫です。間違いなくお送りしますよ」と答えたという。

 出品者の評価ポイントが二百点を超えていたこともあり、安心して代金を振り込んだ。同じ出品者から希望小売価格が約三十三万円のカーナビも出品されていることを知り、約十万八千円で落札した。

 納期は入金から二週間ほど後という条件が付いていた。待っていたが、納期を過ぎても商品は届かない。出品者にメールを送ったが返事はない。

 不安になり出品者の評価欄を見て、がく然とした。「至急連絡ください」「返金してください」など、落札者の悲鳴のような書き込みが十一月中旬以降に殺到していたからだ。「詐欺だ」と直感した。

 ネットを検索し、ネットオークションの詐欺対策サイト「TARGEST」(http://www.pureweb.jp/~targest/)の掲示板で情報交換をした。この出品者は十月からカーナビを大量出品。当初は商品を発送していたものの、十一月中旬以降は発送がほとんどなくなり、連絡も取れなくなっていた。

 被害をまとめると商品の未納が確定したものだけで約二百七十件、被害総額は七千万円以上に上る膨大なものだった。被害者の会を結成することになり、愛知や東京、大阪、福岡など全国から約百人が参加。一件でも多くの被害届を警察に出すよう呼びかけている。

 同サイトを運営するパソコン講師、中島慎一さん(30)=三重県四日市市=によると、今回のケースは代表的なネット詐欺の手口の一つ。カーナビやDVD、パソコンなど高額の人気商品を出品し、最初は商品を送付して評価ポイントを上げておく。信用がついたところで一気に大量出品し、入金させて行方をくらます。自転車操業で計画的に倒産するため「チャリンカー」と呼ばれる。

 被害に遭わないためには、出品者の評価や住所、電話番号などの確認▽出品物の写真がメーカーのカタログではなく、実際に出品者が撮影したものかどうか−などを確認する必要があるという。

 中島さんは「詐欺を確信してヤフーに連絡しても、利用制限がかからず被害が拡大することがほとんど。問題が発覚した後も、被害者に対して、情報提供などの対応もない」と批判する。

 ヤフー広報室は「出品者と落札者をマッチングするシステムを提供しているだけ。その後の取引については、個人と個人のやりとりで、こちらでは関与しない。問題のある出品かどうかも判断できない」とする。

 今年九月時点でオークションには平均で約六百六十五万件の出品があり、月間の取扱高は約四百八十三億円。オークション事業の収益だけでも今年の上半期で約八十二億五千万円に上る。冒頭の男性も「これだけの利益を得ているのだから、詐欺を防ぐ仕組みを充実させるべきだ」と訴える。

 ヤフーでは、問題のある出品者の銀行口座を公開するなど、犯罪の拡大を防ぐ方策は取っている。今年七月には新規出品者に郵送で住所確認をする制度を導入した。広報室では「住所確認の効果を検証し、今後も利用者の啓発や新制度の導入などでトラブルを防ぐ方策を取っていきたい」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20041223/ftu_____kur_____001.shtml