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この番組はガス抜きに終わるのではないのか。ジャーナリスト鳥越俊太郎氏が抱いた危惧(きぐ)に、海老沢会長は「一から出直すつもりで、意見を謙虚に聴きたい」と答えた。だが、事態をどこまで深刻に受け止めていたか、最後まで疑問が残った。
そもそも受信料を食い物にした一連の不祥事がなぜ起きたか。再発防止に向けて何をどう変えていくのか。責任をどうとるか。視聴者が知りたかったのは、この三点だ。
ところが、会長はおわびと弁明、改革のかけ声に終始した。不正が公になってから半年近くたつのに、本格的な具体策は示されなかった。
不祥事はいずれも不正支出だ。制作局の元チーフプロデューサーが番組構成料の名目で総額約四千八百万円を不正に支出させた事件をはじめ、ソウル支局長による取材費水増し精算、岡山放送局放送部長の不正経理など、複数の部署にわたる。
しかも、元プロデューサーの不正は三年前に発覚しながら、会長も経営委員も今年七月まで「知らなかった」と認めたお粗末さだ。不正の報告が担当部長で止まっていたのは、NHKの構造的な問題である。「一部の不心得者がやったこと」(海老沢会長)との認識は甘すぎる。
また、会長自身が国会参考人招致をテレビ中継しなかった判断ミスを認めた。公共放送の使命感、それに自浄能力、改革への真剣な姿勢に欠けていたからだ。
番組中に全国から計二万七千五百件の意見が寄せられ、「経営陣は総辞職を」など厳しい声が多かった。国民の関心は高い。受信料の不払いや解約も収まりそうにない。NHKの信用と経営にかかわる。深刻に受け止めてほしい。
抜本的な改革が必要である。会長は経理システムの見直しと有識者懇談会の設置を挙げたが、これでは不十分だ。経済同友会代表幹事の北城恪太郎氏が指摘したように、違反した場合の厳罰を明示し、監査機能を十分発揮させるべきだろう。
番組では経営委員会が最高意思決定機関として形骸(けいがい)化していることも明らかになった。今の経営陣で果たして改革できるのか。
「放送人の高い倫理観と受信料が公金という意識に欠けていた」−会長の言葉が単に弁明に終わらないか、厳しく監視していきたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20041221/col_____sha_____003.shtml