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■課題はノイズ低減
東京都練馬区の住宅地にある東京電力の社宅の一室では、伝送速度毎秒200メガビットを想定して、電線などから漏れる微弱な電波(ノイズ)の測定実験の真っ最中。電力線から十メートル以内で、どの程度漏れを低減できるかが課題だ。同社電子通信部の小川理・通信インフラ技術グループマネジャーは「電波の漏れが欧米並みの水準でよければ、今の技術でもいけるのですが…」という。世界で一番電波が込み合っている日本だけに、混信対策は慎重にならざるを得ない。
同社の実験は、2−30メガヘルツ帯の高周波を電線にのせているが、電力線搬送通信そのものは、大正時代に社内電話用に使っていた。総務省が今年初め、PLCの実証試験を許可したことから東電、中部電力など十五社が実験に乗り出した。
PLCにはどんな長所があるのか。
光ファイバー回線と電気の屋内配線を連携すれば、パソコンの電源プラグを屋内のコンセントに差し込むだけで、どこの部屋からも高速インターネット通信が可能になる。屋内のLAN(構内情報通信網)ケーブルが不要になり、無線LANよりもスピードが速い。また情報家電などと連動させ遠隔地から住宅内の温度管理も可能になるという。
屋外の配電線などが利用できれば、経済的に光ファイバー網の整備が難しい地方のブロードバンド(高速大容量通信)化が促進され、国内のデジタルディバイド(情報格差)解消にも役立つ。
PLCの欠点は、通信信号を入れたときに発生する電界・電波(漏えい電界)で、発生量が多いと既存の放送、無線にとってノイズになる。2−30メガヘルツ帯の高周波は、アマチュア無線、船舶航空機通信、国際短波放送などが使っており、十分な対策を取らないと混信の心配がある。
一方、海外では一部、PLCが実用化している。電線の地中化が進んでいるドイツでは地方都市六カ所で運用中で、電波漏えいに対する規制がないイタリアでは二都市で運用している。韓国、スペイン、オーストリアなどは実験中。米国では、PLCを行う場合、厳しい条件を満たしたケースのみを許可している。
欧米各国には、電波の漏れの許容範囲を示す明確な基準はない。それだけ電波漏れ対策は難しい。東電の小川理氏は「電波漏えいを防ぐフィルター機能の開発などを進めています。通信モデムの改良も必要です」と課題克服を目指す。
監督官庁の総務省の関心も強い。総合通信基盤局の富永昌彦電波環境課長は「各社の試験が終わる二〇〇五年三月以降、研究会をスタートさせて技術的な検討に入る予定」と明言。漏えい電界の大幅低減技術の確立に向け官民共同で取り組む。
実用化には、アマチュア無線愛好家など関係者の理解を得たうえで省令改正などが必要。利用できるのは「早くて二−三年後」との見通しだが、それも電波の漏れをどれだけ低減できるかが課題。今後の技術開発がカギとなりそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20041216/ftu_____dgi_____001.shtml