2004年12月10日(金) 03時28分
旧ミドリ十字血液製剤、フィブリノゲン 納入6611医療機関公表(産経新聞)
該当者に検査呼びかけ
出産、手術で大出血 C型肝炎感染恐れ
三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)の血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染したとされる問題で、厚生労働省は九日、同社が昭和五十五年以降に納入し、名称などが確認できた全国六千六百十一医療機関のリストを公表した。厚労省はリストをホームページに掲載し、これらの病院で出産や手術で大出血した人に検査を呼びかけた。医療機関名公表は平成八年の薬害エイズ問題、十三年の肝炎問題に次いで三回目。
公表された総数は六千九百三十三施設だが、名称不明のものなどもあり、実質的には六千六百十一施設。現在も存続しているのは五千三百九十八施設で、一般病院の四割を占める。北大病院、東大病院、県立那覇病院など全国にわたる。厚労省は病院リストを非開示としていたが、今年二月の内閣府情報公開審査会の開示決定を受けて、公表に踏み切った。
フィブリノゲンは平成六年にC型肝炎ウイルスの活動を抑える不活化技術が確立されるまで、ウイルス処理が不十分のまま約百二十万本が製造された。主に産婦人科や外科で、出産時や手術時の止血剤として使用されていた。
同社によると、二十八万人が投与を受け、うち約一万人がC型肝炎を発症したと推計されている。東京、大阪など五地裁で感染被害者七十四人が国などを相手に提訴している。
リストは同社の昭和五十五年から平成十三年までの納入実績。保存期間が五年と定められているカルテや手術記録が残っている施設はわずか7%で、投与された患者の特定は困難だ。
肝臓がんで死亡する年間約三万五千人のうち八割がC型肝炎が原因とされる。自覚症状に乏しく、気づかないまま二十年以上の長期間に肝硬変、肝臓がんに移行。感染者は百五十万人以上とみられる。フィブリノゲン以外にも手術や輸血などによる血液感染で、通常の生活ではほとんど感染しない。
◇
■納入先公表までの動き
昭和
39年 6月 非加熱血液製剤フィブリノゲンの製造が承認される
52・12 米国が同種製剤を製造禁止に
62・ 3 青森県のC型肝炎集団感染が発覚
・ 4 ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)が回収。厚生省(現厚生労働省)は安全性が高いとされた加熱製剤への切り替えを承認
63・ 6 加熱製剤でも肝炎発症が相次ぎ、ミドリ十字が緊急安全性情報を出し再度の回収
平成
6・ 8 厚生省がウイルスの死滅処理をした製剤を承認
13・ 5 厚労省、販売元から「昭和55年以降の納入先データは7004件」と記載された報告書を受け取る。リスト入手に動かず
14・ 8 「薬害肝炎被害者の会」結成
・ 10 16人が東京、大阪地裁に提訴。その後、全国で提訴が続き、薬害肝炎訴訟の原告は74人に
・ 12 薬害エイズ被害者の家西悟氏が厚労省に関連資料の開示請求
15・ 2 厚労省が納入先医療機関名を黒塗りした資料を開示
16・ 2 異議申し立てを受け、内閣府情報公開審査会が医療機関名を開示するよう答申。坂口力厚労相(当時)が納入先リスト公表を表明
・ 6 三菱ウェルファーマが厚労省にリスト提出
・ 7 厚労省が納入先公表チームを設置
・ 12 リスト公表
◇
フィブリノゲン納入先医療機関リストの全量と都道府県ごとの問い合わせ窓口一覧(計約七百カ所)は厚生労働省のホームページに掲載されている。厚労省の納入先公表チームは二十八日まで、平日午前八時半から午後八時まで専用電話で問い合わせに応じる。TEL03・3595・2297。土日の十一、十二両日も、同じ番号、時間帯で受け付ける。
◇
医療機関名については産経新聞の各地域版(十、十一日付)と産経webにも掲載しています。
◇
《フィブリノゲン》 血液中の凝固因子が欠乏し、出血が止まりにくい患者の治療薬として、昭和39年に製造承認された血液製剤で、出産時の止血剤や外科手術用の接着剤などにも広く使われた。62年に青森県の病院で投与された患者が集団で肝炎に感染していることが発覚。旧厚生省は非加熱製剤から加熱製剤への切り替えなど対策に乗り出したが、感染は収まらなかった。
(産経新聞) - 12月10日3時28分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041210-00000020-san-soci