2004年12月10日(金) 00時00分
フィブリノゲン 納入リストに県内約百カ所(朝日新聞・)
「自分も投与されたかもしれない」。C型肝炎ウイルスに感染する恐れがあるフィブリノゲン製剤を納入した医療機関が公表された9日、県や熊本市は、住民を対象に相談窓口を設置した。県内でリストに名を連ねた医療機関は、約百カ所。輸血などを受けた経験がある人たちの間には不安感が広がり、病院関係者からは「当時のカルテがなく、投与した患者を確認できない」と、困惑の声が漏れる。
この日の厚労省の医療機関名公表を受け、薬害肝炎訴訟九州弁護団と原告団は熊本市内で会見を開いた。原告団員で熊本市内の主婦、出田妙子さん(46)は「知らない間に血液製剤を投与され感染した。多くの人にこの問題の深刻さを知ってほしい」と訴えた。
出田さんがフィブリノゲンを投与されたのは87年。県内の病院で双子を出産した際、止血で使われ、医師から使用の告知はなかった。
出産後数日で黄疸(おう・だん)が生じ、検査のため別の病院に入院したが原因は不明。その後、肝機能が悪化したため再入院。医師の診断は肝炎で、「輸血が原因で発症する」と説明されたが納得できなかった。
03年、転院先で一緒に入院していた女性が、薬害肝炎訴訟の原告になっているのを知り、調べたところ、自分にもフィブリノゲンが投与されていたことがわかったという。出田さんは「国が早く動いていれば、被害拡大は防げた。国は責任を認め、謝罪し、被害者を救済してほしい。病院も、当時のカルテがないなどと門前払いせず、患者のことを一番に考えて対応して」と訴えた。
しかし医療機関からは、「カルテの保存期間を大幅にすぎ、使用を確認できない」「当時の院長は死亡。投与したかどうか、わからない」といった声も上がる。フィブリノゲンが実際に投与されたのは10年以上も前のことだからだ。公表された県内の医療機関のうち、廃院などで存在しない病院も14カ所ある。
80〜86年に14本のフィブリノゲンを納入、87年に3本返品の記録が製薬会社に残っていた熊本市の市民病院熊本産院では、当時の購入台帳やカルテを探したが見つからなかったという。
大量の出血が懸念される場合にフィブリノゲンが投与されたとみられるが、誰に使ったのか、わからない。熊本産院の松尾勇院長(57)は「カルテがないので確認のしようがない。輸血を受けた人などに、肝炎の検査を受けるようお願いするしかない」という。
81〜87年にかけて49本の納入記録があった熊本市のくわみず病院では、約5千冊のカルテの確認作業をしている。患者への投与が確認できれば連絡し、肝炎の検査を受けるよう勧める方針だ。
同病院の横山典宏薬局課長(37)は「どうして国は早い段階で使用を禁じなかったのか。当時の対応が悪いし、現在の被害者救済もおろそかになっている。医療機関として、患者をきちんと支援していきたい」。
今回の公表を受け、県健康危機管理課(096・383・1183)、熊本市保健所地域医療課(096・364・3185)などに相談窓口が開かれた。相談時間は28日までの午前8時半〜午後5時15分(平日)。
県によると、フィブリノゲンを投与された場合、C型肝炎に感染する確率は推定で3・7%。C型肝炎の検査は通常の健康診断のほか、保健所や病院でもできるという。費用は、県の保健所なら1120円だ。
県は「投与された人がすべて感染するわけではないが、不安があれば検査してほしい」と呼びかけている。
(12/10)
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news02.asp?kiji=4039
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