2004年12月08日(水) 18時10分
無料アプリの代償? 急増するスパイウェア(上)(WIRED)
すべてのネットユーザーがスパイウェアを問題視しているわけではない。一部のユーザーからは、スパイウェアは無料アプリケーションの当然の代償で、自分のコンピューターや生活に入り込んでいたとしても問題ないという声も聞かれる。
ウイルス対策ソフトメーカーの
http://www.sophos.com/ 英ソフォス社で上級セキュリティー・アナリストを務めるグレッグ・マストラス氏は、「これまでの通説だと、スパイウェアはコンピューターにこっそり潜り込む、またはユーザーがインストールに同意したことに気づいていない、とされていた」と語る。「だが実際には、特定のアプリケーションを使いたいがために、それとバンドルされているアドウェアを承知の上でインストールするユーザーもいる。自分のコンピューターにアドウェアがあっても特に気にしないユーザーもいる」
人気のファイル共有アプリケーション『アイメッシュ』(iMesh)は最近、『マーケットスコア』(Marketscore)というアプリケーションと抱き合わせでダウンロード提供されるようになった。一部のユーザーにとって、マーケットスコアはプライバシーを脅かす悪夢のような存在だ。開発元の同名の企業、米マーケットスコア社によると、このプログラムはユーザーの全ウェブトラフィックを同社サーバーを介してルーティングするようになっており、送信されたトラフィックを分析して、「インターネットの動向と電子商取引活動に関する調査報告を作成する」という。
セキュリティーで保護されたウェブサイトに入力されたデータ——パスワード、クレジットカード番号、銀行口座など、送信者と所定の受信者しか見ることができないはずの情報——でさえ、マーケットスコア社は入手できる。同社は、暗号化された情報を解読する技術をマーケットスコアに組み込んでいるからだ。
しかし、アイメッシュのユーザーの中には、マーケットスコア社の行動を気にしていない人もいるようだ。アイメッシュの
http://imesh.com/forums/ フォーラムには、「スパイウェアがなければ、無料のソフトウェアなどといったものは存在しない」と、文句を言うユーザーを非難するメッセージが書き込まれている。
ニューヨーク大学で学ぶキース・キャロンさん(19歳)は、次のように述べている。「マーケットスコアが何をしているのかはよくわかっていた。といっても、ユーザー同意書を隅から隅まで読んだわけじゃないけれど。たいていの場合、あるアプリケーションが別のアプリケーションのインストールを要求したら、その別のアプリケーションはスパイウェアだとぼくは思っている。それでも、今後も無料のファイル共有アプリケーションを使うつもりなら、スパイウェアを支持せざるを得ない。お互いさま、というわけだ」
キャロンさんによると、友人の多くも、無料のソフトウェアにはスパイウェアが含まれているものだと思っているし、またそのことを受け入れているという。ここ最近、米国中の大学のネットワークにマーケットスコアが広がっているが、こうした学生たちの態度が原因なのかもしれない。
コロンビア大学は7日(米国時間)、一部の学生のパソコンにマーケットスコアが感染しているとして
http://www.columbia.edu/acis/announce/ 警告を出した。同大学の大学情報システムによると、マーケットスコアは学生のコンピューターで広く使用されているという。
コーネル大学も10日、次のような
http://www.cit.cornell.edu/computer/security/alerts/marketscore.html マーケットスコアに関する警告を出している。「この脅威のさらなる拡大からキャンパスのシステムを守るため、われわれのネットワークからこのスパイウェアのホームサーバーへの接続を遮断した。[自分のパソコンから大学ネットワークを介して]インターネットのウェブページを閲覧できなくなっている場合、このスパイウェアへの感染が原因である可能性がある」
他にも
http://www.ict.psu.edu/NewsLetters/enews24.html#Article4 ペンシルベニア州立大学など複数の大学が同様の警告を出し、やはりマーケットスコア社のサーバーへの接続を遮断している。
ペンシルベニア州立大学のある学生は、電子メールでの取材に対し「まったく最悪だ」と答えている。「これではウェブサーフィンできないし、マーケットスコアをアンインストールしたらファイル交換ができなくなる。自分のコンピューターをどう使おうとぼくの自由で、大学に指図される筋合いはない。大学のコンピューター管理者の方が、マーケットスコアよりもよっぽど煩わしい」
一方、マーケットスコア社は、自社のアプリケーションはスパイウェアでもアドウェアでもないと
http://www.marketscore.com/Notspyware.aspx 主張している。セキュリティー専門家の分類によると、スパイウェアとは、ユーザーの許可なしに自身をインストールし、どんな個人情報が収集され、それがどのように使用されるのかを明確または率直にユーザーに伝えないソフトウェアのことだ。アドウェアは、スパイウェアの——すべてではないものの——多くの機能を実行するが、その存在と意図についてユーザーに警告を出す。
マーケットスコア社は、声明の中で次のように述べている。「わが社の処理や手順はユーザーの知らないところで行なわれるわけではない——その逆で、われわれは、参加してくれそうなユーザーに、わが社の活動の内容とその方法を余すところなく伝えようと努力している。参加者自身について、また参加者のインターネットの利用法についてどんな情報を収集するか、この情報をどうやって収集するか、提供された情報を保護するために講じている手段、この情報の用途を、きちんと説明しようと努めている」
(12/9に続く)
[日本語版:天野美保/高森郁哉]
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(WIRED) - 12月8日18時10分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041208-00000005-wir-sci