2004年12月05日(日) 02時17分
謝罪放送の海老沢NHK会長、進退にはふれず(読売新聞)
番組制作費の不正流用問題が4日、元チーフ・プロデューサーらの逮捕に発展したNHK。この日夜、海老沢勝二会長(70)はニュース番組で謝罪したが、進退には一切触れず、会見に臨んだ同局幹部も「海老沢体制」下での信頼回復を強調するだけだった。「引き際が大切」「経営側の対応は不十分」——。視聴者だけでなく、OBや労組からも批判の声が上がった。
◆異例中の異例
海老沢会長は、この日午後7時からの「ニュース7」の最後に出演。「受信料を基に運営しているNHKとして、あってはならないこと」と異例の謝罪放送を行った。
「一連の不祥事をきっかけに、受信料の支払いを拒否されたり、留保されたりする方がいらっしゃることを重く受け止めています」「番組を通じ、再生にかけるNHKの真摯(しんし)な姿勢を伝えていきたい」
海老沢会長が一連の不祥事について番組で謝罪するのは、9月に続き2度目になるが、ニュース番組に会長自らが出演するのは異例中の異例。経営の根幹となる受信料の不払いや保留が、11万3000件にまで上っている事態を憂慮しての判断とみられる。
謝罪は約2分間。海老沢会長は自らの進退に触れなかった上、「受信料が公金であるという意識を改めて職員に徹底させる」などと一般論を述べるにとどまり、具体的な信頼回復策は示さなかった。
これに先だち、東京・渋谷のNHK放送センターで会見した関根昭義・放送総局長は、海老沢会長の進退問題について「今の状態をきちんとした形で正常化させるのも責任の取り方」と述べ、辞任を改めて否定。その際、視聴者の信頼回復を図るため、受信料制度の在り方などを議論する特別番組を放送することを明らかにしたが、放送時期や時間帯は明らかにしなかった。
◆「償いたい」…磯野容疑者
詐欺容疑で逮捕された番組制作局芸能番組部の元チーフ・プロデューサー磯野克巳容疑者(48)は4日深夜、弁護士を通じてコメントを発表した。
この中で、イベント企画会社社長の上原久幸容疑者(48)から受け取った金について、「NHKの先輩後輩及び音楽業界の仲間との人間関係を築くため」飲食費に使ったとした上で、「裁きを受けて国民の皆様に償いたい」と謝罪している。
上原容疑者は磯野容疑者の大学時代の先輩。磯野容疑者が上原容疑者に番組制作費詐取を持ちかけ、不正が始まったとみられる。
NHKによると、磯野容疑者は1997年2月から2001年11月の間、「紅白歌合戦」「ふたりのビッグショー」など15番組の制作費計約4888万円を、上原容疑者の口座に振り込ませていた。この間、上原容疑者から磯野容疑者の口座に少なくとも937万円が振り込まれていた。
NHKでは、磯野容疑者の不正が発覚し、懲戒免職処分にした今年7月以降、カラ出張や経費の不正受給が相次いで判明。9月には、海老沢会長が衆院総務委員会に参考人招致されたが、質疑を生中継しなかったため、視聴者から批判が相次いでいた。
◆批判続出
経営陣の対応に、甘さを指摘する声も噴出した。磯野容疑者らが逮捕された4日、NHKの視聴者コールセンター(川崎市)には、午後7時までに抗議や苦情の電話が90件寄せられた。「これ以上、不祥事を起こさないでほしい」「NHKを信頼していたのに残念だ」など、厳しい意見が続いた。
この日午後、NHK職員で構成する「日本放送労働組合」(長村中=おさむら・みつる=委員長、組合員8500人)が開いたシンポジウムでも批判が上がった。
パネリストで出席した元NHK解説委員の柳川喜郎・岐阜県御嵩町長は、「人間は引き際が大事。海老沢会長に美学が多少でもあるなら、どうすべきか自分で考えてほしい」と発言。
閉会後、会見した長村委員長も「(逮捕は)信頼を改めて損ねる事態で、非常に重く深刻に受け止めている。受信料の不払いや保留は、視聴者が納得していないことの表れ。経営側の対応は不十分だ」と述べた。
(読売新聞) - 12月5日2時17分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041204-00000213-yom-soci