2004年12月03日(金) 03時07分
<旧商工ファンド>02年に手形訴訟を乱発(毎日新聞)
商工ローン最大手のSFCG(旧商工ファンド)が02年、債務者や保証人に署名させた約束手形を基に給与などを差し押さえるため、東京地裁の受け付け分の8割に上る手形訴訟を乱発し、同地裁から違法性を指摘されたうえ、訴訟を起こさないよう異例の指導を受けていたことが分かった。その後、同社は契約者に無断で作成した公正証書による差し押さえを増加させており、債務者の弁護士らは「裁判所ににらまれ、手口を変えたのではないか」と指摘している。
関係者によると、SFCGは金銭貸借の契約時に私製の約束手形を契約書類の中に入れ、契約者を振出人として署名させたうえ、返済できなくなると手形訴訟を起こした。手形訴訟は、手形が真正であれば原則1回の審理で支払いが命じられる。同社はこの判決を基に給与や預金を差し押さえていた。
同社が東京地裁に起こした手形訴訟は02年に急増し、同年だけで1515件と、同地裁の手形訴訟の8割を占める異常事態になった。このため同地裁が「手形制度を乱用し、不適法」と、訴訟を控えるように指導。同社は「今後は控える」と約束したが指導に反し、同地裁以外の地裁に提訴するようになった。
うち1件は東京地裁に移送され、昨年11月、杉山正己裁判長が「同社は、原則として契約者に手形の説明をしないで他の書類と一括して署名させ、押印は担当者が一括してすることが多い。振出人は署名の認識がない場合が多い」と指摘。そのうえで「制度を悪用し、訴訟で契約者に圧力をかけて金銭を取り立てるのが目的と認めざるを得ない。他地裁への提訴は極めて遺憾」と述べ、同社の訴えを却下した。
同社は控訴せずに判決が確定し訴訟の大半が取り下げられたが、弁護士らによると、今度は公正証書を使った財産の差し押さえが増えてきたという。公正証書は当事者が契約内容を確認するための公文書で、判決と同じ効力を持ち、金銭貸借の場合は差し押さえも可能。作成の委任状は、他の契約書と一緒に署名させており、弁護士らは「手形をめぐる東京地裁判決の指摘は、公正証書作成にも当てはまる手口だ」と話している。
同社の顧問弁護士は「判決は私製手形が無効と判断したものではない。無用な摩擦を避けるために控訴しなかったが、判決に納得したわけではない」とコメントした。【伊藤正志、石丸整】
■ことば=手形訴訟
正当な手形の所持者が手形金の支払いを迅速に請求するため、証拠を制限して判決を出す特別訴訟手続き。手形の流通性を保護する目的で規定された。手形は本来、第三者間を流通し、最終的な所持者が振出人に手形を提示して支払いを請求する。
(毎日新聞) - 12月3日3時7分更新
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