悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
■控訴審判決 賠償金4960万円支払い命令
判決によると、長女の真愛美さん=当時(14)=は二〇〇〇年四月、統合失調症で同医大に入院。舌をかんでけがをしたのに、医師は約五時間放置し肺水腫などを発症させた。
さらに主治医が必要なビタミンの投与を怠り身体的疲労を進ませるなどのミスが重なり「悪性症候群」を発症。五月三十日に死亡した。
医大側は、死因は「悪性症候群」ではなく「致死性緊張症」で、舌をかんだ際の処置も適切だったとして控訴していた。
判決は医大側の医療ミスについてはほぼ一審判決を支持。病気だった長女の逸失利益については約千百万円少なく認定するなど、賠償額を一審の約六千二百六十万円よりも減額した。
一方、埼玉医大側が、船瀬夫妻が記者会見で「医大が診療報酬をだまし取った疑いがある」と発言したのは名誉棄損に当たるとして、一千万円の支払いを求めた部分について、高裁は船瀬夫妻に百万円の支払いを命じた。「名誉棄損に当たるが公益を図る目的なので不法行為ではない」とした一審判決を取り消し「真実とは認められない公表をし医大の業務を不法に妨害した」と判断した。
埼玉医大広報室は「判決をよく読んで今後の対応を検討したい」としている。
■一審より減額失意の両親
「後ろ向きの判決。非常に残念」。判決後の記者会見で船瀬夫妻はがっくりと肩を落とした。夫妻は上告について「落ち着いて考えたい」と話した。
一審と同じく医療ミスを認めながら、「完治が不確実なので逸失利益を減額する」とした高裁判決に、船瀬さんは「一方的だ。医療ミスは認めても賠償は過小評価された。医療過誤訴訟に対する国家のブレーキだ」と強い憤りを見せた。
また、名誉棄損をめぐり、判決で「裁判で係争中の疑問点は裁判を通じて解明されるべきで、一方的な記者会見は不当」とされたことについても、「前近代的であぜんとした。市民運動の大きな足かせになる」と首をかしげた。
夫妻は弁護士を依頼しない本人訴訟で裁判を戦った。船瀬さんは「十年間の消費者運動で『法律は民主主義を守る武器』と訴えてきた。個人でできる限り戦いたい」と話した。妻の睦子さんは「弱者の立場に立った判決が頂けなくては、医者や病院から遠のくばかり。病院に行くことが不安で、つらく悲しい」と胸中を語った。船瀬夫妻は〇一年二月、主治医を殺人容疑でさいたま地検に告訴しており「対応を厳しく見守りたい」としている。
(吉田 瑠里)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/stm/20041201/lcl_____stm_____000.shtml