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急性脳症を引き起こす可能性が問題になっている野生のキノコ「スギヒラタケ」について、静岡大の河岸洋和教授(天然物化学)らのグループが、マウスに対して致死性の毒性があることを確認した。物質は特定できていないが、「水に溶け、熱に強い高分子成分」というところまで突き止めた。29日に開かれる厚生労働省の「急性脳症の多発事例研究班」で報告する。
実験は、いずれも通常摂取量の10倍以上を与えており、人間の脳症について明確な因果関係を突き止めたわけではない。しかし、脳症の原因を細菌やウイルスなどによる感染症とする可能性は低くなったといえる。
河岸教授らは、甲信越地方の山間部で採取したスギヒラタケを使い、同大の森田達也助教授(食品栄養化学)の協力で、(1)すりつぶして水に溶かす(2)続いて100度で30分間煮沸する(3)さらに濾過(ろか)して高分子と低分子に分ける、という方法で得た成分を、それぞれマウスに与えた。
(1)で6匹中5匹、(2)で3匹全部が死ぬことを確認。(3)では、高分子成分を与えると3匹全部死んだのに対し、低分子成分は3匹全部生き続けた。
スギヒラタケは、主に東北、信越地方でみそ汁や天ぷら、いため物などにして食べられている。水に溶け、熱に強い成分が原因となると、煮たり、いためたりしても、毒性が失われないことになる。
地元のキノコ採取家によると、今年のスギヒラタケの発生は、例年より数週間程度早かったという。環境の変化でキノコの微量成分が突然増える可能性は、専門家の中でも指摘されていた。過去にも単発例だが、急性脳症の発症例が確認されている。
「気温の上昇といった外部ストレスなどで、スギヒラタケの毒性物質の量が、今年、急に増えた可能性がある」と河岸教授。物質の特定はかなり難しいが、「来シーズンまでに何とか突き止めたい」としている。
研究班の一人で、脳症とスギヒラタケの関連を指摘してきた新潟大の下条文武教授は「患者の追跡調査で、みそ汁の具にしたり、いためたりして食べた人が多く発症していた。水に溶け、加熱処理に強い物質が原因だろうと疑っていただけにあり得る話だ。実験データを詳しく分析したい」と話している。(11/29 03:03)