2004年11月29日(月) 21時54分
PHSは3G携帯電話よりトラフィック集中に強い - 256kbps端末はいつ?(MYCOM PC WEB)
DDIポケット本社ビルにて「マイクロセルネットワーク」に関して説明会が開催された。DDIポケットは新社名「WILLCOM」として2005年2月2日に再スタートを切ることになっている。
同社執行役員経営企画本部 喜久川政樹氏は256kbps端末については「WILLCOMスタート時に出るか」と含みを持たせた。
同氏は説明会で、携帯電話とPHSシステムの差を説明、携帯電話は自動車電話を発展させたシステムで、PHSはコードレス電話を発展させたシステムだ、と始めた。
両者とも基地局とよぶアンテナ設備でユーザーの端末の電波を受信する仕組みは同一だが、携帯電話は半径数kmのセルを基本にするのに対して、PHSはより短い距離「マイクロセル」を基本とする。このセル単位の距離の差が特徴の差として現れると言うのだ。
同社のエリアカバーの推移を指して、加入者が349万人とピークだった97年当時の基地局数は約80万局で全国の人口カバー率は85%程度だったが、その後、携帯電話の人口カバー率がほぼ100%に達し、他社PHSが事業縮小・撤退するなか同社は基地局数を増加させた。現在、基地局は160万マイクロセルに達し、2004年度現在、人口カバー率は97%に達しているという。データ通信に適した無線プロトコルを導入し、定額ワイヤレス通信AirH"の提供を開始し、当初、若年層が主だった顧客層が、法人ビジネス層にも拡大した。
○PHSのマイクロセル方式は「大容量」「省電力」に優れる
PHSのマイクロセル方式は「大容量」「省電力」にメリットがあると喜久川氏は強調する。携帯電話は1基地局で広いエリアをカバーする反面、同時に多数のユーザーが集中すればトラフィック集中で速度が低下する。一方、PHSのマイクロセル方式は多数の基地局で複数のユーザーのトラフィックを分散させるため、大容量データ通信が可能だとするのだ。
同氏はさらに、「定額制サービスを3G携帯で提供した場合」を想定して、マイクロセル方式と比較する。
同社のデータ通信ユーザーの同時接続数より、例えば最もトラフィックが集中しているという東京丸の内・大手町付近では1k平方mメッシュあたり220の同時ダウンロードユーザ数が発生している。このユーザー密度は3G携帯電話の1セクタ内で83ユーザーが同時ダウンロードするのに相当する。3G携帯電話の平均セクタスループットは約1Mbpsといい、これを83ユーザーで共有すると、1ユーザーあたりのスループットは12.1kbpsほどになってしまう。これに対し同社のマイクロセル方式では、丸の内・大手町地区のセクタスループットは、3G携帯の1セクタあたりに換算すると約11Mbps。83ユーザーが同時ダウンロードしても、1ユーザーあたり125.9kbpsのスループットを確保できるという。1基地局で端末を処理する携帯電話はトラフィック集中に弱く、PHSのマイクロセル方式はトラフィック集中に強いと主張する訳である。
さらに同氏は、都内の丸の内・汐留の某高層ビルの高階層、低階層4ポイントで3G携帯電話を複数台同時接続した場合のスループットを、同社のPHSと比較した結果を紹介した。
同社が調査した結果では、A社はカタログ上は最大384kbpsの回線速度だが、調査した結果では1台のみで約300kbpsのスループットを得られたのに対して、2台で同時に接続した場合では250kbpsを切り、4台では50kbps程度のスループットに低下したという。それに対し、同社のAirH"は5台目でも63kbpsを確保したとする。
まとめると、複数台同時接続時の5台目のスループットではA社で54kbps、B社は47kbps、C社は32kbps、AirH"128kは63kbps、AirH"128k(圧縮時)271kbpsとする。このことから言えるのは、10万人加入程度(ほぼ5台同時接続)の利用環境ではAirH"のスループットが最も高く、3G携帯でトラフィック集中を回避するためにはマイクロセル化が必須であると同氏は言う。
また、同氏は現在の3G携帯電話のデータ通信サービスを振り返ると、定額サービスを提供しているのはC-HTMLのみ(約7,800〜10,000円と高額)で、フルHTMLでの定額サービスは同社のみ(約5,000円)と指摘し、3G携帯電話でAirH"と同様な定額サービスを展開するのは困難ないし不可能だと見解を示した。
また、PHSのメリットとして「省電力」を同氏は挙げるが、それは端末と基地局との距離が短いため電波の出力を抑えられることにあり、低電磁波を実現しているとする。同社によればPHSは、携帯電話の約10分の1の電力であり、その結果、現在全国の約1200の病院でPHSが導入されているとのことだ。
また、電波の人体吸収の技術基準値SAR値は、米国の基準では1.0W/kg、日本の基準では2.0W/kgを超えないよう定めている。これらに対し、環境保護に厳しいドイツでは0.6W/kg以下の携帯電話に「有害物質不使用」の「青い天使マーク」を付与しているという。しかし、PHSならSAR値は「0.03W/kgと圧倒的に低い」と同氏は強調する。
最後に、今後のマイクロセルネットワークについて、現在32kbpsの基本チャンネル速度を2倍以上に引き上げる「高速化」、基地局のさらなる「大容量化」、高利得アンテナの開発で屋内浸透5dB程度の向上を目指すとしている。
取材画像はこちら
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2004/11/29/004.html
「PHSは魅力的なメディアだ」DDIポケット、新ネットワークで新たな攻勢へ
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http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/23/09.html
DDIポケット
http://www.ddipocket.co.jp/
(MYCOM PC WEB) - 11月29日21時54分更新
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