2004年11月25日(木) 17時53分
おれおれ詐欺、1プリペイド販売代理店に捜査の壁(読売新聞)
「おれおれ詐欺」の振込先に使われる銀行の不正口座。その抑え込みを狙って、口座の転売を禁じる「本人確認法」の改正案が25日に衆院を通過し、今国会で成立することになった。
しかし、詐欺の実行犯にとって、もう1つの“道具”となっているプリペイド式携帯電話は野放しのまま。都心では、本人確認が不要な電話が売られ、同じ名義で1万台分の契約をした業者もいる。「口座の規制だけでは詐欺の被害は減らない」。国会でも、早急な法規制を求める声が高まっている。
東京都内に、おれおれ詐欺や架空請求詐欺の捜査を担当する全国の警察幹部が必ず名を挙げる携帯電話の販売代理店がある。事件に利用されたプリペイド式携帯を調べると、この店の名が、契約者として何度も登場するからだ。
警察当局によると、この店は、携帯電話会社と1万台分もの契約を結んでおり、複数の中小の販売業者に数百台単位で電話を転売している。警察が通信記録から利用者をたどろうとしても、「すべて、この店に行き着き、実行犯を割り出すことは不可能」(警察庁幹部)という。
プリペイド式の利用者は270万人。2000年7月には、携帯電話各社が本人確認を義務化したが、ネット上では、今も転売を重ねて利用者を突き止めることのできないプリペイド式携帯が、1台数千円程度で売られている。
おれおれ詐欺の実行犯の大半は、こうしたプリペイド式携帯を使って一般の家庭に電話をかけている。今年1—6月までのおれおれ詐欺で、発信元が判明した827台の携帯電話のうち、92・6%をプリペイド式が占めていた。
おれおれ詐欺の被害額は、今年1—9月までに129億円。昨年1年の3倍を記録する中、実行犯にとってなくてはならないプリペイド式携帯の転売や譲渡そのものは禁止されていない。
監督官庁の総務省も「経済活動の自由を損なう」として、法規制ではなく、携帯電話各社による本人確認の徹底にとどめたい意向だ。
今回改正される本人確認法では、おれおれ詐欺の振込先になる口座について、売買や譲渡を50万円以下の罰金の対象にし、組織的に行った者には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科すことになった。
この動きを、大手銀行の幹部は「大きな支店では、口座の申し込みの7割が不審な内容。改正法ができれば、窓口では『罪になる』と言って断りやすい」と歓迎する。
この銀行の東京郊外の支店では、近くの大学の学生4、5人が口座を開設し、1口座5000円—1万円で、他人に売っていた。
別の銀行の埼玉県内の支店では、先月初めにわずか1000円の入金で開設された口座が、約10日後、おれおれ詐欺の振込先になっていた。
「法改正で、こうした口座の大半は取り締まりの対象になる。ただ、口座とプリペイド式携帯は詐欺の2大道具。両方に網をかけない限り、被害を抑え込めない」。若手衆院議員の1人はそう強調している。
(読売新聞) - 11月25日17時53分更新
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