2004年11月25日(木) 16時16分
[ニュースBOX]原子力安全・保安院の分離・独立 知事の主張、広まらず /福島(毎日新聞)
◇戦術練り直す必要
原子力安全・保安院の経済産業省からの分離・独立を主張する佐藤栄佐久知事の旗色がはかばかしくない。26日には、原発施設がある14道県が国へ安全に関する要望を提出するものの、分離については「議論すべきだ」といった内容に抑えられてしまった。知事は効果的なタイミングを狙って小泉純一郎首相らに直接訴えていく構えだが、地方側の強力な援軍が得られない中で、戦術を練り直す必要もありそうだ。【上田泰嗣】
要望書を提出するのは県も参加している「原子力発電関係団体協議会」。毎年実施しているが、今年は8月の関西電力美浜原発3号機の配管破裂事故をめぐる要望なども加える。ただ、福島県が同機の老朽化や検査体制の問題を取り上げ、保安院の早期分離も盛り込みたい意向を示したものの、賛成は得られなかった。
毎日新聞が原子力施設の立地する16道府県の知事を対象に9月に行ったアンケートでは、福島県のほかに、神奈川、岡山両県が「早急に独立すべきだ」と答えるなど、保安院の独立を求める知事は9道県に上る。しかし、今回の要望活動では抑制された文言になり、ある県幹部は「国との関係を重視している県もあるようだ」とみている。
佐藤知事の分離論は「安全規制より、推進を優先している」との保安院への不信感から始まっている。最近では10月に、福島第1原発5号機の配管肉厚が国の基準を下回っているにもかかわらず、保安院が「問題ない」と判断したことなどが火に油を注いだ。
これに対して保安院の松永和夫院長は今月16日の会見で「科学的合理性に基づいて判断している」と反論した。佐藤知事は19日の北海道東北地方知事会議の席上、「まだ信じられないことを言っている」と、再度強く批判した。
しかし、県内でも地元町村が保安院を評価する発言を始めた。22日に県に対し福島第1原発1号機の検証作業を始めるよう要望した双葉地方電源地域政策協議会の遠藤勝也会長(富岡町長)は「国(保安院)も一生懸命体質改善している。スタッフの増員や原子力安全基盤機構の発足など、いろいろ取り組んでいる」と持ち上げた。
もともと原発に対する地元と県の認識には温度差があったが、この発言について県は「溝を感じた」(原子力安全グループ)と驚く。「県が(分離問題に)燃え上がってきたので、水を掛けようとしているかのようだ」と戸惑いを隠さない。
「分離問題では追い風が吹いている」(同)との認識もあるが、国の政策を動かすためには、有効な新しい一手が求められている。
11月25日朝刊
(毎日新聞) - 11月25日16時16分更新
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