2004年11月21日(日) 00時00分
住基カード利用進まず住基カードを入れれば住民票の写しなどが発行される自動交付機。画面に触れて操作する=大津市御陵町の大津市役所で(朝日新聞・)
交付は人口の0.25% 昨年8月から発行が始まった住民基本台帳(住基)カード。県内で交付を受けた人は人口のたった約0・25%。住基カードを入れれば住民票が自動交付される機械を設置するなど利用に積極的な自治体は少数派で、住基カードに見切りをつけ、独自のシステムや土・日曜日の窓口開設で対応するところも出ている。
9月末までに県内で発行された住基カードは3338枚。これまでに計十数枚しか発行していない町もある。住基カード使用の各種証明書の自動交付機を設置しているのは大津、長浜、近江八幡の3市のみ。
大津市は今年7月、市民課窓口の脇に交付機を置いた。住民票、印鑑登録証明など4種類の証明書を発行でき、平日は午後7時まで、土・日曜日も利用できる。カードを差し込み、音声案内に従ってタッチパネルで暗証番号や証明書の種類を選ぶ。窓口より早く、申請書も不要だ。
同市は5千枚の需要があると見込んだが、発行したのは約1100枚。発行を促すため、図書館利用カードや病院診察券の機能をカードに付けることを検討しているが、コストがかかり過ぎ、実現のめどは立っていないという。
市民課は「若い世代には、徐々に広まりつつある」というが、平行して、これまで通り土日も窓口を開けている。
長浜市は月113万円で交付機1台をリースしているが、利用は窓口取り扱い分の1%未満しかない。市民課は「平日の窓口混雑も解消できると思ったが、予想以上に低調」と困惑。商工労政課は、長浜商店街連盟の要請で買い物ポイントカード機能を盛り込む検討を始めた。
10月に誕生した甲賀市は、住基カードではなく、市民カードを使う自動交付機を5支所に設置した。市民カードは印鑑登録時に交付され、すでに約2千人が受け取った。10月中に発行した住基カードは5枚だけ。市の担当者は「住民の負担も住基カードより軽い。印鑑登録証なので市民に分かりやすく、普及も進むと考えた」と説明する。
草津市は自動交付機を置かず、土日も窓口を開けている。市民課は「長い目で見れば交付機の方が低コストかもしれないが、住基カードを持つ人が少なすぎる」という。
全国の住基ネットを管理・運営する地方自治情報センター(東京)の戸田夏生・全国センター長は「全国的にも普及率は0・5%未満だと思う。住基カードを使って自宅のパソコンから納税申告などをする『電子申請』が広がれば、普及するのでは」と話す。
普及しない原因について、甲南大法科大学院の園田寿教授は「持つ方に具体的なメリットがなく、一つの番号、カードから重要情報がいくつも取り出せることへの不安感があるため」と指摘する。「行政に個人情報が集中している今、11ケタの住民票コードでいくつもの個人情報を一括管理すれば、行政の力を肥大させ、三権分立という民主主義の根幹を揺るがしかねない。図書館カードの機能をつけるなどすれば、使い方によっては思想・信条まで把握される。運転免許証や社会保険などの番号を、結合せずに活用すればよく、共通番号を廃止するか、希望選択制にすべきだ」と話している。
■住民基本台帳カード■ 昨年8月25日から発行が始まった。発行手数料は県内一律500円。カードに組み込まれたICチップに住基ネットの住民票コードが記録されており、居住地以外の市町村でも住民票が取得でき、転出入手続きも簡略化される。市町村は条例で、病歴などを記載したカルテ機能や図書館カードなど独自のサービスや情報を付加することもできる。カードのもとになる住民票コードが「国民総背番号制」につながると指摘する声もある。
(11/21)
http://mytown.asahi.com/shiga/news01.asp?kiji=4565
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