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東海地方に住む主婦A子さん(60)は、今年初めまで、夫婦で返済に追われる暗い日々を送っていた。今は「借金の重荷から解放された」と、表情が明るい。
A子さんが消費者金融会社から初めて借金したのは十六年前。夫(55)の給料が減ったことがきっかけだった。その後、夫の会社が倒産したこともあって、しだいに借入先が増えた。
今年初めには夫婦合わせた債務残高は、八社から合計約四百八十万円に膨らんだ。夫婦合わせた手取り月収は約三十万円だったが、毎月、返済で約十九万円が消えた。知人からも借金し、国民健康保険の保険料も滞納するまでに。
二人は今年二月、多重債務者の救済活動をしている市民団体に駆け込んだ。そこでアドバイスを受け、簡易裁判所で特定調停の手続きをすることにした。特定調停では、調停委員を交えて業者と交渉し、利息制限法の低い金利で借金を再計算して債務残高を減らすことができる。
六月に調停が終了。六社の借金残高はゼロになり、残り二社の残高も計約三十万円になった。残高がゼロになった六社のうち四社については過払い金が取り返せそうだったので、処理を司法書士に依頼した。
■240万円戻る
二社は交渉で決着。交渉が決裂した残り二社に対しては、簡易裁判所に過払い金返還請求訴訟を起こした。今も一社との訴訟が続いているが、三社からは合計で約二百七十万円の過払い金を返してもらった。債務残高との差し引きで、正味では約二百四十万円が返った計算だ。
破産を選んだら債務残高がゼロになるだけ。特定調停と過払い金返還請求の組み合わせを選んだことで、約二百四十万円が戻ってきた。A子さんは「このお金で、国保の滞納保険料も納めることができた」と喜ぶ。
A子さん夫婦の借金の決算を記者が推定してみた。今年初めまでに借りた総額は約千五百六十万円で、返済した総額は約二千四百万円。返済金のうち約千三百二十万円が利息分だったが、利息制限法による再計算をすると、約六百万円に激減。約二百四十万円もの過払い金が生まれた。
■市民団体 最大規模の訴訟を準備
多重債務者を救う活動をしている各地の市民団体でつくる「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」(東京)は、今月中旬に全国で過払い金返還訴訟を一斉に起こす準備を進めている。計一千件くらいを目標にしているといい、同訴訟の一斉提訴ではこれまでで最大規模となる。
これまでにも、弁護士や司法書士の団体が、多数の多重債務者の代理人となって集団提訴を起こしてきた。先月二十五日には名古屋弁護士会の有志四十一人が代理人となり、多重債務者百六十七人が名古屋地裁に一斉提訴した。請求総額は約三億七百万円に上る。
この有志のうち四人は今年九月、訴訟のノウハウを詳しく説明した「過払い金返還請求マニュアル」を共同執筆し、名古屋弁護士協同組合から出版した。一斉提訴や執筆の中心になった弁護士の瀧康暢さんは「この訴訟に慣れていない弁護士でも、これを読めばスムーズに訴訟が進められるはず」と話している。
■2種類の金利が生む『差額』
「過払い金」が生まれるのは、金利に二通りの規制があるからだ。
利息制限法(利限法)の上限金利は貸出金額によって年15−20%だが、貸金業者を対象にした出資法の上限金利は年29・2%となっている。貸金業規制法が定めた条件を満たせば、業者は利限法を超えた金利で貸せるので、業者のほとんどは、利限法を超える金利で貸し出している。
貸金業規制法が定めた条件は▽債務者が任意に利息を払った▽必要事項が書かれた契約書面や受取証書を業者が交付した−など。だが、法に基づいた多重債務処理の手続きでは、裁判所が条件を厳しく判定していることから、利限法を超えた金利の受け取りが認められるケースは少ない。
この場合は、利限法の上限金利で借りたことにして返済利息を再計算する。すると、返済した額のうち利息に充てた分が減り、その分、元金の返済額が多くなる。借りた金額の合計より、返したことになる元金の方が多くなってしまうと、その差額が返済しすぎた「過払い金」となる。
貸金業者との取引が六年以上であれば、過払い金が発生していることが多く、返還訴訟は債務者側が勝つ割合が圧倒的に高い。このため貸金業界では、超過金利を有効と認める条件の緩和を求める声が強い。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20041104/ftu_____kur_____000.shtml