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2004年10月21日(木) 01時01分

10月21日付・読売社説(1)読売新聞

 [電話加入権]「何らかの補償が要るのでは」

 約六千万のNTT加入者には割り切れない判断だ。

 NTTの固定電話を引く際に利用者が払う税抜き7万2000円の施設設置負担金(電話加入権)について、情報通信審議会が、廃止を容認する答申を出した。

 答申に沿って、NTTは来年早々にも「加入権」を半額程度に値下げし、六年後には完全に廃止する方針という。

 だが、これにより、「加入権」の資産価値は減少し、値下げの前後で、加入者間に不公平も生じてしまう。

 答申は、「加入権」を基本料の前払いと位置づけ、加入者は回線設備の形でその対価を受け取っているとして、NTTには一切、返還義務を課していない。

 個人や企業が負担した「加入権」は総額4兆円以上とされる。全額返還は非現実的としても、加入して日の浅い利用者を中心に、電話料金の割引など何らかの補償措置を検討すべきだろう。

 また「加入権」には、一種の資産と扱われ、売買や税務当局の差し押さえの対象になっている現実がある。

 大方の企業は、「加入権」を固定資産に掲げており、値下げで価値が減れば損失の計上を迫られる。

 国の決定による損失である以上、財務省は法人税の算出に際し、損金算入を認めるべきではないか。

 「加入権」は、旧電電公社の時代に、電話回線網の急拡大を賄う資金調達手段として認められ、NTTに移行後も事実上、新規加入の条件になっている。

 かつては巨大な回線網の構築に役立ったが、携帯電話の普及などに伴って固定電話の加入が減り、設備投資も縮小して徴収する意味がなくなってきた。

 さらに、日本テレコムとKDDIが「加入権」不要のサービスを始めることが、NTTの危機感を募らせていた。

 こうした状況から、答申は、「加入権」が固定電話の新規加入の妨げになり、NTTの競争条件を不利にすると判断し、廃止を含めた見直しの容認を決めた。

 廃止自体は、やむを得ないことではある。ただ、幅広い国民が支払ってきたものだけに、その影響は小さくない。

 NTTドコモが新規加入料を段階的に廃止したことで資産が目減りしたとして、ドコモが損害賠償を求められた裁判では、「約款は、新規加入料が値下がりしないとは約束していない」との理由でドコモが勝訴した。

 答申は、この判例を一つの論拠とし、補償は必要ないとした。だが、早々と廃止された携帯電話と、長い歴史を持つ固定電話では「加入権」の意味が異なる。廃止には何らかの補償が必要だろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041020ig90.htm