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2004年10月19日(火) 00時00分

横浜の医療ミス 『内視鏡が唯一の選択肢』 患者家族に病院側説明 東京新聞

 横浜市磯子区の同市立脳血管医療センターで昨年七月に起きた内視鏡手術の医療ミスで、病院側は患者・家族への事前の説明で内視鏡手術の長所を強調し、唯一の選択肢のように説明していたことが分かった。医師らは内視鏡手術が未経験という事実も伝えておらず、器具セットをリースで導入したのも手術のわずか一カ月前だった。

 五十代の女性患者は昨年七月二十七日夜、脳内出血で同センターに運ばれたが、出血が少量のため様子をみることになった。翌朝、当直医から連絡を受けた脳神経外科の部長以下四人の医師が回診。すぐに内視鏡手術を決定し、患者と家族に説明を始めた。

 家族によると、四十代の男性主治医は「従来の開頭手術はリハビリが大変だ。内視鏡なら頭に開ける穴も小さく回復も早い」と、内視鏡手術のメリットを強調。唯一の選択肢かのように説明したという。

 主治医と執刀医が違うことも、家族には知らされなかった。

 手術の途中、執刀医らは止血に手間取り三時間近く後に開頭手術に切り替えたが、女性は意識不明に。現在も呼び掛けに応じる程度で、寝たきりの状態が続いている。

 同センターは、「内視鏡手術の選択で、医師が偏った説明をしていた可能性がある」と認め、謝罪している。

■『正しい説明あれば…』家族怒り

 「妻は手術の実験台にされた」−。女性の夫と長女は、こみ上げる怒りと悔しさに耐えながらこう語った。

 「過失はない」と繰り返した主治医らは、内視鏡手術の経験を「結構ある」などとあいまいに答え、初めての手術だったという事実を家族に隠し続けた。問題が発覚した後も、医師らは「執刀医は内視鏡を補助的に扱ったことがあり、初の手術とは考えていなかった」と強弁した。

 だが、他病院に勤務する内視鏡手術のベテラン医師は「一般的な開頭手術と内視鏡手術は難易度が全く違う」と指摘、同センターの医師たちの釈明を「信じられない」とする。

 夫と長女は「正しい説明を受けていれば、手術に同意しなかった。元気な姿で家族に戻してほしい」と訴える。治療や手術の前に患者や家族に十分説明して同意を得る「インフォームド・コンセント」の手続きは、全国の病院でかなり根付いてきた。だが、今回は説明したものの治療の長所ばかりを強調。手術の危険性や他の選択肢などにはまったく触れず“同意”させていた。

 また、内視鏡手術の方針を四人の脳神経外科医だけで決定。他の診療科の医師と治療方針を協議するカンファレンスを無視し、病院内部の倫理委員会にも諮らなかった。

 内視鏡手術は二〇〇二年に、東京都葛飾区の東京慈恵会医科大付属青戸病院で、「腹腔(ふくくう)鏡」と呼ばれる内視鏡を使って前立腺がん摘出手術に失敗。患者は死亡し、この手術が未経験だった医師が刑事責任を問われている。

 夫は「なぜきちんと説明もせず内視鏡手術をやったのか。真実を打ち明け、心から謝罪をしなければミスはまた繰り返される」と、訴えている。 (横浜支局・金杉貴雄)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20041019/eve_____sya_____002.shtml