2004年10月18日(月) 03時08分
人工呼吸器事故、3年で15人死亡…国立病院・療養所(読売新聞)
全国の国立病院機構傘下の病院で、人工呼吸器を巡る医療事故が過去3年間に23件起き、15人が死亡していたことが同機構の調査でわかった。
患者の多くは筋ジストロフィー、筋委縮性側索硬化症(ALS)といった難病などで長期間、人工呼吸器を装着していた。呼吸器の装着者は今後も急増すると予想され、安全対策の見直しが迫られそうだ。
調査は、同機構に所属する154病院を対象に、2001年から3年間の事故について実施された。
中部地方の病院では、2001年11月、人工呼吸器から患者に空気を送る管を交換した約2時間後、看護師が巡回した際、患者が酸欠状態になっているのを発見した。交換の後、何らかの原因で管から空気が漏れていたが、異常を知らせる警報が鳴らず、発見が遅れた。蘇生(そせい)措置を行ったものの、患者は死亡した。
昨年3月には、九州の病院で、患者の体をふくなどの処置後、人工呼吸器から空気を送る管の接続部分がはずれたのに気づくのが遅れ、患者が死亡した。
23件の事故の原因は、人工呼吸器の接続部がはずれたケースが10件と最も多く、気管内に入れた管が抜け落ちた例も3件あった。事故後に15人が死亡、2人が意識不明の重体に陥った。
同一の病院内で、操作法が異なる複数の機種の呼吸器が使われ、1病院あたり平均約5種、最大14種もの機種が使用されていた。このため同機構は、操作が簡便で安全性の高い機種に統一する方針を決めた。
全身の筋肉が衰える筋ジストロフィーやALSなどの難病は、進行すると肺を動かす筋肉にも障害が出て呼吸困難に陥り、かつては多くの患者が死亡した。だが、人工呼吸器で長期生存が可能になり、1980年代後半から装着する患者が増加、20年以上の装着者もいる。同機構の病院でも、呼吸器をつけた入院患者は計約2000人にのぼる。
しかし、人工呼吸器は本来、救急など急性期医療用に開発され、長期間装着すると管がはずれるなど不具合が起きやすい。さらに、無計画に同じ病院内で何種類もの機種が導入されたことや、患者の急増の一方で病棟の看護師の人員不足などがミスの背景とみられる。
◆国立病院機構=全国の旧国立病院と旧国立療養所を合わせ、今年4月に発足した独立行政法人。旧国立療養所は95か所あり、難病、結核、精神疾患、重症心身障害など一般病院では採算が合いにくい病気を対象とし、長期入院患者も多い。
(読売新聞) - 10月18日3時8分更新
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