2004年10月17日(日) 00時00分
【検証−広がる”オレオレ詐欺”】 ㊥(朝日新聞・)
県警の分析/家族偽装から「劇場型」へ/ 知識があっても術中に陥ってしまうのが「オレオレ詐欺」。県警の調べを基に被害の実態や巧妙化する手口を分析する。
捜査2課の調べでは、「オレオレ詐欺」が県内で初めて発覚したのは昨年5月。同課幹部は「すぐに下火になるだろう」と踏んでいた。だが、昨年末までに92件の被害届け(未遂含む)があり、被害総額は4825万円。今年に入ってさらに拍車がかかり、1月から9月末までの被害は154件、約1億2千万円。昨年からの被害の累計は1億6837万円に達した。
被害は、銀行振り込みが可能な時間帯の昼前から午後2時過ぎに集中。手口で最も多いのは「交通事故の示談金」(64・6%)で、「金銭借用」(29・2%)が続く。警察官を装うケースは昨年はわずか1件だったが、今年は全体の半数以上を占める。
被害者は、女性が7割弱。年齢別で見ると昨年は50代以上だったが、今年は20代〜40代も全体の4分の1近くに。かつては孫だった「当事者」が息子、夫へと広がっている。
当初は家族を装っていた手口は、次第に警察官や弁護士らが入れ替わり登場する”劇場型”へと変わった。時間を制限して焦らせ、携帯電話で通話したまま行動を逐一”実況”させて、確認を取らせないこともある。
金沢中署が9月7日に発表した事件では、相手が「交通機動隊の○○ですが」と名乗って被害者を信じ込ませた。救急車のサイレンを流して臨場感を高める細工もあったという。
「組長の車と事故」「事故相手の女性が流産」と脅されるケースも。9月29日に夫が妊婦と事故を起こしたと信じ込まされた内灘町の主婦(60)は、事故がなかったことが確認できた後も、「金を用意できたか」という催促の電話に恐怖心が消えなかった。未遂に終わったが、津幡署員は「主婦はろうばいして、落ち着くまでにかなり時間がかかった」と話す。
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同課は、プリペイド式の携帯電話が犯罪の温床になっていると指摘している。
最近は携帯各社とも販売時の本人確認を強化しているが、それでも転売や名義貸しで悪用する例が後を絶たない。電話を販売する金沢市内のコンビニエンスストアの店長は「手続きは5分足らずで、学生証の提示でも買える。一度売れると後は誰の手に渡るか分からない」と明かす。
現金の振り込みでは、多くは都市銀行の口座を指定してくるが、架空口座がほとんど。犯罪グループは役割分担をしており、被害者が振り込むと、「引き出し役」に間もなく引き下ろされる。
電話と指定された口座ぐらいしか手がかりはないが、その「糸」も途中で切れてしまう。同課は「犯人らは捜査が及びにくい状態の中で、電話1本であっという間に何百万円もだまし取っていく。粘り強く捜査を続けるしかない」と話している。
(10/17)
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news02.asp?kiji=8028
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