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2004年10月13日(水) 00時00分

牛肉輸入再開 与党結論先送り 最初の関門でもうつまずき 東京新聞

 米国産牛肉をめぐる政府の動きは自民党が十二日、牛海綿状脳症(BSE)対策の見直し案について結論を先送りし、急ブレーキがかかった。輸入再開までには与党の理解を得た後、米国から安全性の保証を取り付け、消費者を納得させるという三つの関門が待ち受ける。だが大統領選を控えた米国からの輸入圧力が高まる中、政府は第一関門でつまずいた。 (経済部・山川剛史)

◇与党の壁

 BSE対策の見直しは、一枚紙の厚生労働省令にある「検査の対象は0月齢以上とする」の数字を「21」に変えるだけと言ってもいい。

 この一字のために、厚労、農林水産両省の幹部はこの一週間、与党への根回しに奔走した。全頭検査の解除後も、当面は希望する自治体に対象外の牛の検査費用も助成する「苦肉の策」も用意して臨んだ。だが努力は実らなかった。

 「安心のために始めた全頭検査をひるがえすのは重大だ。米国産を輸入するためと受け止められるのは当然」

 「検査基準を変える前に、脳など危険部位の除去などが徹底されているべきだ。本末転倒だ」

 自民党の「動植物検疫・消費安全小委員会」では政府への批判が噴出。週内に再度協議し結論を出すことになった。

◇折り合い

 政府は与党の了解を得て、食品安全委員会に見直し案を諮問さえできれば、米国と正式に協議する“切符”は手にできる。ただ、米国との協議にこぎ着けたとしても、今度は輸入の具体的条件でいかに折り合うかという問題が浮上する。

 これまでの協議で米国側は「全頭検査は非科学的」の一本やりだった。だが、日本が米国での牛肉の管理体制に合わせることができないと分かると「(検査から除外する牛は)二十カ月以下で結構だ」と、あらゆる外交ルートを通じて方針転換を伝えてきた。

 しかし、米国では歯の生え方で生後三十カ月以上かどうかを推定してきただけだ。月内にも再開される日米協議では、牛の生後月数(月齢)をどう判断するかが最大の焦点となる。

 今月四、五日の両日、日本から牛肉の格付けや解剖学の専門家による調査団が派遣され、肉の色や骨の密度で月齢を推定する新手法の説明も受けた。ところが、その相関関係を示す対照表は「無理やり作った印象」(農水省幹部)で、国内消費者を納得させるだけの説得力には乏しい。

◇安心感

 政府部内では、月齢など生産管理のしっかりした一部農場の牛肉を、先行輸入する案が“落としどころ”として有力視されている。

 食肉関連業界からは、「全頭検査のマインドコントロールを解く」(吉野家ディー・アンド・シーの安部修仁社長)と強気発言も出ている。しかし、先行輸入案すら全面解禁を強く求める米国がのむかどうか不透明だ。

 何より日本では、「全頭検査の安心感が浸透。これを失えば国産牛は大変なことになる」(自民党幹部)のが実情だ。安易な解禁は検査済みと未検査の牛肉を混在させる。さらに全頭検査を続ける自治体と国に従う自治体に分かれれば、消費者は混乱し、ようやく回復してきた牛肉消費量もどうなるか分からない。

 食品表示の問題に取り組んできたイトーヨーカ堂でも、「米牛肉の表示をどうするかは、国がどこまで消費者に安心感をもてる説明をするか見定めてから決める」という。

 米牛肉の輸入再開問題は、スタート地点にも立っていないのが実情だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041013/mng_____kakushin000.shtml