2004年10月09日(土) 14時42分
「出合い系」規制法施行1年 性犯罪 抑止力に? 児童買春 摘発最多ペース 罪の意識薄く(西日本新聞)
「出会い系サイト規制法」の施行から一年余が経過した。新法施行により、インターネットの出会い系サイトで十八歳未満に性交渉を誘う書き込みをしただけで摘発対象となった。児童買春など「性犯罪の温床」とされる同サイトに初めて法規制の網をかけたが、今のところ犯罪が減る兆しはない。抑止効果に疑問の声も出始めている。(社会部・東伸一郎)
◆「迷惑かけない」
「だれに迷惑をかけたわけではないのに、何がいけないの」
昨年九月、福岡県警は同法違反容疑で初めて福岡市の元小児科医(39)=懲役刑が確定=を逮捕した。この男と約半年間「援助交際」の関係にあったという女子中学生は、捜査員に対し「小遣い稼ぎ」で売春を続けたことを悪びれる様子もなく話したという。
小児科医は自宅のパソコンから出会い系サイトに「中学生限定で援助します」などと書き込み、少女たちを誘った。一回書き込みをすると、翌朝には(少女たちから)二百件近いアクセスがあった。「異様な反応にびっくりした」と供述したという。
少女たちが連絡に使っているのは携帯電話のメール。警察の摘発を逃れるため、「@3」(3万円から)などの隠語を使って、誘いに応じるケースも増えている。
◆1—6月で371件
規制法の誕生は「ネット上で少女の性が堂々と売買されている現状をこれ以上放置できない」(警察庁)という当局の強い意思表明だった。
全国の警察が摘発した出会い系サイト絡みの児童買春事件は、統計を取り始めた二〇〇〇年は四十件だったが、新法導入前年の〇二年は七百八十七件と約二十倍に激増した。
新法施行後、抑止効果が期待されたが、今年上半期(一—六月)のまとめでは、摘発件数は三百七十一件に上り、施行前の前年同時期より逆に四十五件増加。「このままでは今年も最多記録を更新する勢い」(警察庁担当者)なのだ。
◆なお被害者扱い
なぜ、出会い系サイト絡みの児童買春が減らないのか。
昨年、警察が摘発した出会い系サイト絡みの児童買春事件のうち94%は、少女たち自らが「買春」誘いの書き込みをして事件を誘発していた。
このため、新法はそれまで保護対象としていた十八歳未満の少女らも処罰の対象に加えた。だが、法の趣旨は少女らの摘発が狙いではなく、「罪の自覚と反省を求めたもの」(板倉宏・日大法学部教授)だった。
大人には罰金刑が科せられても少女らは少年法により保護処分にとどまり、たとえ少女が誘って買春行為に至っても少女が「被害児童」という扱いは変わらない。
実際に規制法違反容疑で全国で摘発された二十人(六月末現在)のうち、少女は二人だった。
捜査現場からは「性犯罪から少女らを守ろうと法規制を強めても、少女の側に犯罪という意識がなければいたちごっこだ」(福岡県警少年課)との声も漏れる。
洋服やカラオケ、携帯電話代を目的に「手軽な買春」に走る少女。そこに群がる男たち。
いわば性のモラルの問題で、規制だけでなく、思春期からの教育こそ必要なのかもしれない。
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ワードBOX=出会い系サイト規制法
インターネットの出会い系サイトを利用して18歳未満の子どもに性交渉を持ち掛けることや、18歳未満の子どもが相手を募る書き込みをすることを禁止する法律。年齢、性別を問わず一律100万円以下の罰金。携帯電話の普及で出会い系サイトをきっかけにした児童買春などが急増したことを受け、子どもの被害防止を目的として、2003年9月13日に施行された。
(西日本新聞) - 10月9日14時42分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041009-00000073-nnp-kyu