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2004年10月07日(木) 00時00分

確かなあした 先物取引トラブル読者から反響 東京新聞

 9月23日の生活面で商品先物取引のトラブルを報道したところ、読者から「同じような体験をした」という声が数多く寄せられた。先物取引に知識も興味もなかったのに、先物会社から電話でしつこく勧誘されて取引を始め、短期に大きな損を出したが、取引を中止させてくれない…。どの人も共通してこう訴えている。 (間野丈夫、金井俊夫)

■取引中止させてくれない…

 東京都内の四十代の男性脚本家はこの夏、二カ月余りの間に、百六十万円ほどの貯金の全額と、クレジットカード会社からの借金二十万円をガソリンの先物取引につぎこんでしまった。今、決済しても、戻ってくるのは八十万円余りだという。

 七月末、突然の電話で勧誘された。「新人で、私が最初の客だという営業マンの情にほだされ、そこまで言うんだったらと契約してしまった」

 今年に入ってから仕事がなく、生活は苦しい。八月初め、価格下落で大きな損を抱えてから、決済して取引をやめたいと先物会社に言い続けている。だが、現在の市場の動向では決済できないなどといった理由から、いつまでたってもやめさせてくれない。一回の取引で先物会社に二万二千円の手数料を払う。これまで七回の売買で、計十五万四千円を払った。

 損が膨らむことへの恐怖感で精神的に不安定になり、自殺も考えた。相談する相手がなく、心のかっとうをインターネット上の「日記」につづっている(別項)。

■ネットで損拡大

 「今年一月、先物会社の社員から電話がしつこくかかってきた。高校の卒業生名簿で名前を見たという。絶対損をさせないと言われ、灯油の先物に投資してしまった」と言うのは、石川県の四十代の男性会社員。

 取引を始めて数日後、決済を申し込んだが「続けますと言うまで、一時間三十分も電話で説得された」。その後も何度も決済を拒否され、結局、六月初め、二百万円ほどの損を出してようやく決済できた。

 ところがその間、男性は、この先物会社に聞いた知識をもとに、インターネットを通じて別の先物会社に独自の注文を出しており、そちらで九百万円の損を出してしまった。計千百万円。貯金を使い果たした。

■手数料2千万円

 中部地方の三十代の自営業男性は、先物会社の営業マンから電話や訪問で何度も勧誘され、「根負けして」二〇〇二年十一月、灯油の先物に数十万円を払い込んだ。

 翌日、営業マンの上司がきて説得され、百万円に増やした。損得がトントンの時期にやめようとすると「今いい流れに乗っている」、損が出ると「マイナスを取り返すために」と引っ張られ、投資額がどんどん膨らんだ。

 クレジットカード会社からも借金して総額三千万円をつぎこんだが、取引をやめた今年七月までに手元に戻ったのは千五百万円。弁護士を通じ損害賠償の交渉をしているが「三百万円程度しか戻らないようだ」とため息をつく。手数料だけで約二千万円。「手数料目的にむやみな売買を重ねていたのは明らかではないか」と憤る。

■内容証明郵便で解約の意思表示

 取引を中止したい時はどうすればよいか。

 法政大経済学部教授の宮崎耕一さんは、今年七月に出版した「先物地獄のワナを解き明かす!−被害救済のための抜本的改革私案」(民事法研究会)の中で二つの「緊急提言」をしている。

 第一に、内容証明郵便を先物会社に書く。「私は貴社との先物取引の委託契約を解除します」と書き、配達証明もつけてもらう。第二に、電話の声を録音できる装置を用意し、先物会社との会話を録音する。この二つを実行した上で弁護士に相談する。

 録音は、裁判でも役立つ。ポイントは「売買の細かい数字、相手の不誠実な応対ぶり、会話の日付や時刻も声で入れ、相手にも確認させる」ことなど。ただし、訴訟で損失を取り返そうとしても「裁判が有利に運んでも五割ぐらいしか戻らず、平均すると三割以下」と宮崎さん。「被害に遭わないよう、事前に注意することが大切です」

 宮崎さんは先物取引自体の有用性や発展の必要性は認めており、知識がない個人の被害をなくすため「商品先物取引士」といった資格制度の創設を提唱している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20041007/ftu_____kur_____000.shtml