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■誓いを唱和 弁護士相談 生活の設計
東海地方のある郵便局では、朝礼時、週一回ほどのペースで職員が「愛の五つの誓い」を唱和する。「私は××を愛します」の繰り返しで、××には仕事や家庭、お客さま、同僚などの言葉が入る。締めくくりは「だから、私は絶対、犯罪を起こしません」という決意表明だ。ある男性職員は「おかしなことをやっているように見えるでしょう。でも、これが職員が多重債務者になって罪を犯すのを防ぐ対策の一つなんです」と話す。
唱和は、一部の郵便局ではかなり前から行われてきたようだ。郵政省時代の旧東海郵政局が一九九六年に発行した職員向けパンフレット「幸せの防犯知識」に、この誓いが載っている。
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郵政公社(職員数約二十七万人)によると、二〇〇三年度に刑事事件で摘発された職員は百三十三人で、うち借金を抱えていた職員は九十八人(73・7%)。犯罪で目立つのは横領。借金返済に追われて精神的に追いつめられ、利用者のお金に手をつけてしまう。
郵政公社広報部は「悪質なケースは刑事事件にし、公表しているので、郵便局職員が起こした犯罪はよく報道されるが、他の金融機関と比べ実質的に不祥事が多いのかどうかは分からない」と説明する。
郵政が取ってきた対策は幅広い。まず、職員を啓発するパンフレットやビデオ。郵政省、公社が示す大枠に沿って旧郵政局や公社の支社が作ってきた。旧東海郵政局は〇〇年、職員向けに「生活設計に関するガイドブック」を発行している。
十年ほど前からは、弁護士と契約し、旧郵政局ごとに職員を対象にした多重債務相談所も置いている。多重債務に陥った職員はそこで弁護士のアドバイスを受けられる。
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啓発パンフレットなどで職員に呼びかけてきたポイントは▽健全な生活をする▽犯罪を起こせば自分だけでなく家族の生活も窮地に陥る▽高利の借金は最初は少額の利用でも、次第に借金を増やしやすく、特に途中からは返済のために借り入れする自転車操業に陥りやすい−などだ。
公務員や金融機関の職員は立場上、多重債務を抱えていることを隠したいと考えがち。このため「生活設計に関するガイドブック」は「悩みごとを誰かに相談することは決して恥ずかしいことではない」「債務者自身が強い意志を持ち立ち直る決心をすることが大切」と強調している。
対策も熱を入れすぎると、職員から「プライバシーの侵害」という反発を招く。〇〇年、旧関東郵政局管内の多くの郵便局が、高利の借金をしていないことなどを誓わせる「防犯宣言書」への署名を職員に求め、労働組合から猛反発を受けた。
郵政公社のある中堅幹部は「多重債務者がこんなに多く生まれる社会構造がそもそも問題だと思う。高利金融に関する制度の見直しも検討されるべきではないか」と感想を漏らした。
■借金がらみ 各地で凶悪事件続発
ここ一カ月余りの間、全国各地で借金絡みの殺人事件が続発している。三重県川越町の路上で九月十一日夜、「090金融」を営んでいた若い男性が殺害された事件は、同十三日、男性から借金していた男が犯行を認め、逮捕された。
長野県高森町の高齢女性が九月八日、刺殺されているのが見つかった事件では、同県飯田市出身の男が同十七日、強盗殺人容疑で逮捕された。男は長野、愛知県内の別の殺人三件も自供。警察の調べで、消費者金融に二百万円近い借金があったことが分かっている。
同月下旬、四人の遺体が発見された福岡県大牟田市の連続殺人・死体遺棄事件では、殺された女性が貸金業を営み、容疑者の女との間で金銭トラブルがあったとみられている。
多重債務が主な原因である個人の破産は、昨年の申立件数が約二十四万件で、十年前の約五・六倍。多重債務者の救済活動をしている弁護士や司法書士らは「多重債務者が増えるにつれ、借金が原因の犯罪や自殺が増えている」と指摘する。
多重債務に陥った自衛隊員が自殺しないようにと、防衛庁も今年三月、多重債務の対策マニュアルを作った。多重債務者の救済活動をする市民団体「高松あすなろの会」の事務局長鍋谷健一さんは「一般国民が多重債務に陥らないようにするための対策や法整備を政府や自治体が積極的に行うべきだ」と強調している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20041007/ftu_____kur_____001.shtml