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環境や福祉など社会貢献に取り組むとして設立された特定非営利活動法人(NPO法人)を、犯罪の隠れみのに使うケースが目立ってきた。こうした団体の背後には、暴力団がいることが多く、地道に活動するNPO法人の関係者や、設立を認証する側の国や都道府県を悩ませている。
長野市内の医療機器製造会社に昨年8月、突然ファクスが届いた。差出人はNPO法人・メディアオンブズマン。医療機器製造会社の社長(56)が以前経営していた別会社が振り出した額面総額1億2300万円の期限切れ約束手形を手に入れたとして、換金を求める内容だった。
NPO法人の理事長は、警視庁が3日に恐喝未遂容疑で逮捕した国内最大の右翼団体・日本青年社副会長の滑川裕二容疑者(53)。ファクスが送られた数日後、同法人調査役で元暴力団幹部の浅水聡容疑者(60)が、社長への面会を求めて会社に現れるようになった。
関係者によると、浅水容疑者はNPO法人の封筒をテーブルに置き、弁護士に「週刊誌に書かせるぞ」などと声を上げることもあったという。
警視庁は今年1月にも、NPO法人「消費者問題研究会」の実質責任者らを、大手建設会社から近隣対策費名目で3000万円を脅し取った疑いで逮捕した。この責任者も元暴力団組員だった。
警察庁によると、NPO法人役員らの逮捕は、02年以降で6件あり、そのうち今年は4件。容疑では、未遂を含めた恐喝が4件、偽計業務妨害と暴力行為等処罰法違反が各1件。検挙数はまだ少ないが、暴力団幹部がNPO法人を隠れみのに使うケースが出てきたことに同庁は警戒を強めている。
98年12月に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、法人の認証数は右肩上がりだ。03年5月の改正法施行では、暴力団排除規定が強化され、「暴力団構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体」も認証しない条件に加えられた。
しかし、内閣府と都道府県が行う認証は、書面審査が原則。このため、背後に暴力団など反社会勢力が潜んでいても見抜きにくいのが実情だ。
メディアオンブズマンを認証した東京都は4日、関係者らに事情を聴いたうえで、認証の取り消しを含めて対応を検討する方針を固めた。
都が認証したNPO法人は約3600団体。定款違反の活動をしたり、募金活動をめぐってトラブルを起こしたりした数団体に改善命令を出したことはあるが、認証を取り消した例はまだない。
担当者は「NPO法は公益のために団体を育成しようという性善説からできた法律。取り締まりが目的ではなく、指導するにも相当の証拠がないと難しい」という。
NPO法人「日本NPOセンター」は、アンケートなどをもとに約1万7000団体の情報を、インターネットで公開する。事務局によると、登録数が1万を超えたころから、トラブルを抱える団体が出てきたという。
最近は、多重債務の整理の相談に応じるというダイレクトメールを受け取ったとして差出人のNPO法人について問い合わせる例が増えているという。ただ、一つひとつの団体の実態把握は事実上できず、団体の情報提供はできても、評価は難しい。
田尻佳史事務局長は「地域でコツコツ活動している小さな団体もNPO法人格を取得できるようにするため、法人格取得のハードルは高くするべきではない」と規制強化に反対する。その一方で、NPO法人側も信頼を得るための努力が必要だとしている。
〈NPO法人〉 特定非営利活動促進法によって、法人格を得た団体。法人格を得ることで、不動産の賃貸や登記などが団体名でできる。今年8月末現在、全国で1万8261団体ある。3年以上、事業報告書などを提出しなかった場合は、認証を取り消されることがある。事件に絡んだり、報告書を提出しなかったりして同月末までに8団体の認証が取り消された。
(10/04 23:56)