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■予見はできたか
ハブ破損による脱輪事故を、予測できたか。業務上過失致死傷罪に問われた同社元市場品質部長村川洋被告(58)は「部下から具体的に報告を受けたことはなく、まったく予想できなかった」、村川被告の部下だった元同部グループ長三木広俊被告(56)も「整備不良が原因と思った」と否認した。
弁護人意見でも、一九九二年のクレーム対策会議で「ハブに問題はない」と結論を出したほか、その後も強度不足が疑われる事例がなかったとし、「九九年当時、これ以上の原因調査を尽くしても、強度不足が明らかになったといえない」と訴えた。
これに対し検察側は冒頭陳述で、二被告が担った肩書から事故を予見できたとし、こんな“ストーリー”を披露した。
「昔、トラックでこれありましたよ。ハブが輪切り状に割れるんですけど」−。村川被告は九九年六月二十九日、三木被告から報告を受け、不具合を承知していたと指摘した。
さらに、三木被告も整備不良による摩耗が原因であるとの報告書をまとめるよう、個別対策会議の出席者らと打ち合わせたことを明らかにした。
■リコールは誰が
「不具合の報告は受けていない」。リコール(無料の回収・修理)検討会を開く立場とされた村川被告は静かに、だがきっぱりと言った。知らなかったのだから、リコールを検討することもできない−。言外にそう主張した。弁護側はさらに、(九九年の)JRバス事故後に「期間内に実車応力測定試験など、できる限りの原因調査をした」と、一定の義務を尽くしたことを言い重ねた。
一方、三木被告は少しうわずった声で「私はバス担当のグループ長。トラックについて改善措置を講じる権限はありません」と、部門の違いや立場上権限がなかったと述べた。「トラック部門とバス部門は縦割り。トラックの原因調査を行う権限はない」「グループ長は特定分野の責任者。市場情報をまとめて上司に報告するにすぎない」。弁護側も“お門違い”を打ち出した。
だが、誰がリコールを決めることができたのか、そしてリコールはなぜされなかったのか。答えは、なかった。
■真実を話して
二被告に最も近い最前列の傍聴席。事故で愛妻の紫穂さんを失った明雄さん(38)が座った。毅然(きぜん)と法廷を見つめる目が閉じたのは、検察側が事故目撃者の証言を読み上げた時だった。
「タイヤが外れて転がるギーという音にも気付かず、前を向いて子どもたちと歩いていた」
見ることができなかった事故直前の妻の姿を、まぶたの裏に描くようにしばらく目をつぶる明雄さん。「家庭のことは妻に任せっきり。仕事をほどほどにし、楽をさせてあげればよかった」「事故で死んだと聞き、頭が真っ白になった。きっと人違いだと思った」−。続いて、明雄さんの心情が読み上げられる。背を丸め、少し前のめりになる三木被告。背筋を伸ばした村川被告は、うつむいたまま。信じられない事故で妻を奪われた夫の言葉は、こう締めくくられた。「真実を、話してほしい」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20041001/lcl_____kgw_____002.shtml