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■実 感
今回の年金制度改正は(1)保険料の段階的引き上げと上限の設定(2)給付額の調整に新方式の「マクロ経済スライド」導入(3)基礎年金国庫負担割合の三分の一から二分の一への段階的引き上げ−などが柱だ。
このうち、真っ先に変化を実感するのは、厚生年金保険料の増額。現在は年収の13・58%(半分は企業が負担)だが、毎年秋(今年は十月、来年以降は九月)に0・354%ずつ引き上げ、二〇一七年度から上限の18・30%で固定する。
これによると、月収三十六万円、ボーナス三・六カ月分の平均的収入のサラリーマンの場合、月給の保険料は六百三十七円上がって二万五千八十一円に。十月の保険料は十一月に徴収されるため、実際には十一月の給与明細で手取りの減少に気付くことになる。年末のボーナスから天引きされる保険料は四万五千百四十六円で千百四十七円増。年間では約一万円の負担増だ。
一方、自営業者らが納める国民年金の保険料は、現行の一万三千三百円が来年四月から二百八十円上がって一万三千五百八十円になる。〇六年度以降は賃金上昇率に応じて額が変化するが、〇四年度の賃金水準を基準とした場合、一七年度以降上限の一万六千九百円になる。
■マイナス
年金給付はどうなるか。来年、〇五年度については、物価下落傾向が続いている影響で引き下げられる可能性が高い。
〇五年度給付額の算定に使われる〇四年の消費者物価指数は、前年同月比マイナス0・1%からマイナス0・5%の下落で推移している。このままの状態が続き、通年の下落率がマイナス0・2%だった場合、給付額の算定には今回導入が決まったマクロ経済スライドは適用されず、従来の物価スライドに基づき0・2%の減額になる。国民年金(基礎年金)で年額千六百円の引き下げだ。
マクロ経済スライドは年金給付額の算定方法だった物価スライドに、平均寿命の伸びや少子化の進行という年金財政にマイナスとなる要素を加味して、平均0・9%給付の伸びを抑える制度。
将来、物価が1%上がっても、0・9%を差し引いて0・1%しか給付を上げない。0−0・9%の物価上昇では給付は横ばい。マイナスならそのままマイナス。どのみち、給付は現行水準より次第に下がってゆく。
■道 筋
基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げも、結果的には国民の負担増につながる。
達成の目標は〇九年度。財源として、当面は公的年金等控除の縮小や老齢者控除の廃止など年金課税の見直しによる増収分(〇四年度二百七十二億円、〇五年度以降約千六百億円)を充てる。
具体的には来年一月以降、年金受給者の課税最低限が引き下げられ、年三百万円の年金収入がある場合、年約八千円で済んだ税負担が九倍近い約七万円に。来年二月支給の年金から、天引き額が一万円余多くなる。
しかし、国庫負担引き上げには、〇九年度時点でなお二兆九千億円もの財源が必要。今後、サラリーマンの定率減税の縮小や廃止、小泉政権を引き継ぐ政権では消費税率引き上げも課題となる。国民にとっては、保険料負担増、給付水準減、増税−という「三重苦」が待ち構えるわけだ。
少子高齢化の進行で増え続ける年金給付の財源を確保し、制度を持続させるためには、一定の痛みは避けては通れない。
ただ、年金行政の最前線を受け持つ社会保険庁は、あきれるばかりの不祥事続き。政治的にも、国会議員による年金保険料未納問題で関心を集めた年金制度の抜本改革の道筋が一向に見えてこない。こうした現状では、簡単に受け入れられる痛みでないことも事実だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041001/mng_____kakushin000.shtml