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「郵政民営化は改革の本丸。協力するのが当然だ。足を引っ張ろうとする、あるいは改革を妨害しようとしている人たちを起用する考えは全くない」−。
二十七日予定の内閣改造や自民党役員人事で、小泉首相は郵政民営化への協力姿勢を「踏み絵」にすることをしばしば強調しています。「民営化反対の議員は、大臣や党役員には任命しないぞ」というわけです。
そこまでやらないと、郵政民営化の実現は難しいのでしょう。
■与党の了解は得られず
何しろ、九月十日に郵便、郵便貯金、簡易保険の郵政三事業に「窓口ネットワーク」事業を加えた四事業を持ち株会社の下にぶら下げて民営化するとの基本方針が閣議決定された際には、与党の了解を得られませんでした。政府と与党が表裏一体の政党政治では、異例のことです。
自民党郵政族は閣議決定には反対しませんでしたが、賛成でもありません。今後、閣議決定を基に民営化法案をつくる過程で、「意見を反映させる」つもりなのです。
郵政族は民営化に反対です。彼らの主張を反映させるということは、首相の側から見れば、「骨抜き」にするということにつながります。
全国に張り巡らされた約二万四千七百の郵便局網は、これを利用する国民には極めて便利な存在ですが、同時に郵政族には有力な票田なのです。特に事実上「世襲」の特定郵便局長たちは地域の名士であり、以前より衰えたとはいえ、かなりの集票力を持っています。
民営化されれば、郵便局網の一定の縮小は避けられず、その集票力も一段と弱まるでしょう。郵政族が危機感を持つのは当然です。
■国民の利便性に配慮を
ただ、郵便局網の縮小で、国民の利便性も影響を受けるのは事実です。ですから、郵政族に指摘されるまでもなく、民営化に際しては国民の利便性に配慮すべきでしょう。
このため、郵便事業については、全国一律のいわゆる「ユニバーサルサービス」の義務を課すのです。郵貯・簡保にはそこまで強い義務は要らないにせよ、最小限のサービス網を維持すべきです。
基本方針には「経営形態論が先行している」との批判が目立ちます。
方針をまとめる際、最後までもめたのは、スタート時の経営形態を四事業一体の特殊会社にするのか、四事業を持ち株会社方式で分社化するのかという一点でした。
形は単なる外形にとどまりません。中身をも決める重大な要素なのです。首相や竹中平蔵経済財政担当相が経営形態を重視したのも、理解はできます。しかし、あまりにも経営形態にこだわり過ぎたという印象を与えたのも、事実です。
実際、民営化で何を目指すのかという点は、多くの国民に伝わっているようには思えません。法案をつくるまでの間に、もっと理解を求める努力を重ねるべきでしょう。
首相は自身のメールマガジンで、郵政民営化の意義をあらためて説明しています。
「郵政事業が民営化されれば、資金の流れも『官から民へ』と大きく変わることになります。この改革はまさに『民間にできることは民間に』という小泉内閣の進める改革の本丸なのです」と。
いいたいことは分かります。しかし、もう少し、かみ砕いて説明する必要があるでしょう。
郵貯・簡保は国営だった上に、民間銀行や生命保険会社よりも税制面などで有利だったので、巨額の資金を集めることができました。
そのために、民間の事業に使われるはずだったお金が、郵貯や簡保から特殊法人、独立行政法人などに回されてきました。特殊法人などの中には必要なものもありますが、時代の流れで不必要になったものも多いのです。それが、郵貯などのおかげで延命できているのです。
特殊法人などに回す資金を集めるための財投債は、郵貯や簡保が有力な買い手になっています。民営化が、こうした資金の流れを変えるきっかけになる可能性があります。
また、銀行や生保は前よりは競争原理が働くようになりましたが、まだ不十分です。郵貯・簡保の民営化で競争をもっと促したいものです。
ただ、完全な意味での民営化が実現するまでは、貯金・保険金の限度額撤廃や、融資業務進出などには一定の制限を設けるべきです。
■民業の圧迫は避けたい
限度額が撤廃されれば、巨額な郵貯・簡保がますます肥大化しかねません。それに、税制その他で民間より有利な状態で融資業務に本格進出すれば、信用金庫、信用組合などの地域金融機関には脅威でしょう。民営化した結果、「民業の圧迫」が進むようでは困ります。
ゴールである「本丸」に向けての小泉さんの最後の激走に、注目しましょう。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040926/col_____sha_____001.shtml