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十七日夕、東京都千代田区の主婦会館プラザエフ。消費者機構日本(COJ)の設立総会後の記者会見が開かれた。会長に就任した検察OBで前公正取引委員長の根来泰周さん、理事長に就任した日本生活協同組合連合会専務理事の品川尚志さんら、役員が並んだ。
品川さんは「団体訴権の担い手となれる消費者団体は、まだ国内には存在しない。日ごろから消費トラブルの情報収集をしている三団体で協力して新組織をつくることにしました」と話す。
COJは、同連合会と日本消費者協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の三団体が、基本財産の一千万円を分担して協同で設立。今月中にも内閣府に特定非営利活動法人の認証を申請する。
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全国の消費生活センターに寄せられた相談は昨年度、前年度比57%増えて約百三十七万件と、年々増加している。
近年の消費者被害の特徴は、一人一人の被害額は比較的少ないものの、同じような被害が大勢の人に及ぶことが多いことだ。
個人で訴訟を起こすことも可能だが、裁判の費用や業者との交渉の手間も考え「泣き寝入り」することが多い。
団体訴権は、被害を受けた個人に代わり、一定の条件を満たした消費者団体が、消費者に不利な契約条項や、不当な勧誘行為などの差し止めを求める訴訟を起こすことができる制度だ。
勝訴すれば、被害者全体が救済されるほか、未然に被害を防ぐこともできる。
内閣府の国民生活審議会消費者政策部会は昨年五月「早急に導入する必要がある」との報告書をまとめた。現在は、同部会の検討委員会で制度の中身の議論が進められ、一、二年後には制度化される見通しだ。
この制度に欠かせないのが、訴訟を担う消費者団体側の受け皿。内閣府の調査では、消費者団体は全国で約四千七百もあるが、小規模の団体が多く、訴訟を担うだけの人材や財政基盤を持たない団体がほとんどだ。
国での議論が進むにつれて、今年一月には関西で団体訴権の担い手を目指す消費者団体が中心になって「消費者団体訴訟制度を考える連絡会議」を設立するなど、担い手づくりを目指す動きが活発化している。
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制度化では、どんな条件を満たした団体に訴権を認めるか、損害賠償請求を認めるか−が大きな課題。イギリスやドイツ、台湾、タイなど既に導入している国は、不利な契約条項や不当な勧誘行為の差し止め請求が中心だが、フランスのように損害賠償請求を認めている国もある。
消費者団体訴訟制度検討委員会は、早急な制度の立ち上げを優先し、当面は不当な契約、勧誘行為の差し止め請求に限定する方向で議論を進めている。
将来、損害賠償請求を認めるかどうかは今後の検討課題。消費者団体の条件についても、内容は固まっていない。
当面、損害賠償請求を認めないことについて、主婦連合会事務局の大河内美保さんは「これまで私たちが起こした訴訟でも、分かりやすい損害賠償請求の形を取ったことが多かった。差し止め請求だけでは使い勝手が悪く、もっと広い範囲で訴訟が起こせるようにすべきだ」と話している。
■訴訟費用支援する基金設立へ
消費者団体が訴訟費用をどう賄うかも大きな課題だ。勝訴しても賠償金が入ってくるわけではないからだ。この問題に対応しようと「企業社会責任フォーラム」(阿部博人代表)が今秋にもNPO法人格を取得し、団体訴訟を支援する「消費者支援基金」をつくる。すでに、日本ハムが2000万円の寄付を決定しているという。
基金は、麗沢大学企業倫理研究センター教授の高巌さんが提唱した。高さんの試算では、現状では消費者団体訴訟をするのに、年間2000万円程度が必要になるという。
産地偽装や無認可添加物使用など、企業がさまざまな消費者問題を起こしても、消費者に個別に補償するのは難しい。このため、問題を起こした企業に、社会的な責任を果たす意味で、基金への寄付を呼びかける。
高さんは「団体訴権制度の創設は、同時に消費者の自立も求められており、具体的な行動を起こすための資金が重要になる」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040923/ftu_____kur_____001.shtml