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盛岡東署はどのような判断で、市教委にどう伝えたのか。そして学校側や市民の反応は−。
佐々木芳春副署長は「明確な基準はない」とした上で、四つの判断理由を挙げた。男性の前歴が「子ども対象の重大事件」で「現在は精神科治療中」。さらに、不明場所の近くに「多くの学校」があり「平日の下校時間帯」だったことだ。
市教委へは実名を伏せ、「二十年ほど前の重大事件」と伝えたが、内容を尋ねられ、公表しないよう断って「誘拐殺人」と答えた。「人権には配慮したつもり」と佐々木副署長。その後、「何かを起こす緊急性があるわけでもなく冷静な対応を」と再度電話もした。
だが、オフレコだったはずの「誘拐殺人」情報は、市教委から県教委に伝えられ、生徒や保護者も知るところとなった。
男性が行方不明となった大沢川原近くにいた女子高生(17)は「その日は、二十年前の誘拐殺人の犯人が行方不明になってるから、気を付けて帰りなさいって、授業中に緊急放送が流れ、怖いと思った」と話す。
子どもの安全を最優先した今回の警察の対応について、市教委の菊池直学校教育課長は「英断だったと思う」と評価。「情報の流し方、受け止め方は個々人が常識に照らし、判断していくしかない」とも。
集団下校させた桜城小は行方不明先から歩いて数分の場所。安達裕司教頭は「あの時点で取り得る最善策だったと思う」と語る。
市内の繁華街で聞いてみると「親としては知らせてほしいと思う」(三十四歳の母親)など、警察の対応を支持する声がほとんどだった。
だが、佐々木副署長は「本当に難しい話」と繰り返しながら、こう省みた。
「適切な判断だったと自信を持って言える話ではない。後で分かったことだが、周辺にいると思った男性は東京にいた。結果的に本人が精神障害だと広め、市民に不安も与えたかとも思う。百パーセントうまくいくということはない」
男性は当時、治療で落ち着いた状態だったという。市内で精神科医療に携わる関係者は、控えめに口にした。「男性が自分の家族で、この状況に置かれたら…と想像してみてほしい」
この問題について識者の意見などを(下)で22日に掲載します。
〈騒動の経緯〉
八月二十四日午後一時すぎ。盛岡東署に一本の電話が入った。盛岡市内の精神病院からで「入院中の男性患者が家族との買い物先で行方不明となった。捜してほしい」。
男性は二十年ほど前に市内で起きた男児誘拐殺人事件の犯人として逮捕され、実刑判決を受けて刑期を終えた人物と分かった。
同署は男性がいなくなった繁華街はずれの大沢川原を中心に捜すとともに、通報の約三十分後、市教委に「注意してほしい」と電話で連絡。男性の名前は伏せたが、行方不明場所や年齢、服装、前歴などを伝えた。
午後二時すぎ、市教委は市立の小中学校五十八校と県教委へファクスなどで連絡。大沢川原に近い桜城小(千葉茂校長、児童数三百四十三人)では保護者に迎えに来てもらい、先生が付き添って地区ごとに集団下校させた。また放課後の部活動を切り上げ、早めに帰宅させた中学校などもあった。
男性は翌二十五日、東京都内で保護された。関係者によると「外国大使館で亡命を求めていた」という。地元紙などがこの行方不明騒動を報道。警察の対応について「万が一を考えた適切な処置」と評価する声を伝える一方で、「子どもや父母の不安をあおった」「男性への人権侵害」と批判も載せた。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040921/ftu_____kur_____000.shtml