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今月七日昼すぎのこと。さいたま市緑区のJAさいたま三室支店に男性の慌てた声で電話があった。
「息子が交通事故を起こした。相手の女性が妊娠中で手術をしなくてはいけないと言っている。治療費や示談金など四百九十九万円を至急振り込まないといけない」。男性は取引の長いお客さん。電話を受けた女性職員がいつもと様子が違うことに気付き「おれおれ詐欺ではないか」と支店長の浅子賢三さんに報告。浅子さんは男性職員を男性宅に向かわせ、息子と連絡をとらせると、だまされたことが分かり、寸前に詐欺被害を防ぐことができた。
同支店には浦和東署から感謝状が贈られ、浅子さんは「おれおれ詐欺が続発していると聞き、職員に注意を促していた。事件を防ぐことができてよかった」と話す。
「おれおれ詐欺」は昨年、全国的に被害が急増。警察などが注意を呼び掛けたこともあり、年末にはいったん終息したように見えた。ところが、今年の春先から再び増加に転じ、今では逆に被害額が増える傾向にある。
県警は、詐欺の手口が巧妙化しているからだとみる。当初は金に困ったり、トラブルに巻き込まれた息子になり切る単純な手口だったが、最近はトラブルの相手はおろか、上司や警官、弁護士まで電話口に登場。県警も「ストーリーが複雑な劇場型に変わった」という。
一件当たりの被害額も昨年の三十四万円から百四十七万円に急増。被害者も高齢者に限らず二十−四十代の若い層にも広がってきた。
劇場型とはいえ、交通事故を装うケースでは筋書きはほぼ同じ。「相手の助手席に妊婦が乗っており、事故で破水し病院に運ばれる」。偽警官らがまことしやかに状況を説明。入院費や示談金のほか、「保釈金を支払えば警察に拘置されない」とだます例も多い。
だが県警によると「警察が示談金を求めることは絶対ない」。また刑事訴訟法上、警察の取り調べ段階での保釈はあり得ない。冷静に考えれば気付きそうだが、迫真の演技が、正常な判断能力を奪ってしまうようだ。
県警が過去に摘発したグループは一日百件以上、全国に手当たり次第に電話をかけ、現金が振り込まれると仲間が素早く引き出していた。県警は「振り込みから引き出しまで平均約六分。いったん振り込めば、お金は戻らない」と指摘。しかも指定口座や連絡先の携帯電話は「第三者を介して違法に入手しており、実行犯にたどり着くのは無理」と嘆く。
電話は、午前から昼すぎに集中。即日の振り込みを求める。「金融機関の窓口業務が終わる午後三時までに振り込ませ、ばれる前に逃げるため」と分析する。
ある県警幹部は「金融機関と連携して取り締まるのが最も有効だ。親族や近隣同士でも声を掛け合って防ぐしかない。とにかく不審な電話があったらまず落ち着いて冷静になってほしい」と強調する。金融機関を含め社会全体で有効な手だてを考える時期にきている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/stm/20040920/lcl_____stm_____000.shtml