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2004年09月16日(木) 17時05分

古紙抜き取りが横行、関東で最大年20億円被害の試算朝日新聞

 中国などへの輸出増で価格が高騰している古新聞や古雑誌を、資源ごみの集積所から組織的に抜き取るケースが多発している。関東1都6県だけで、03年度の被害額が最大で約20億円にのぼるという試算結果を、古紙回収の業界団体が公表した。抜き取りは、自治体の委託で回収している業者にも打撃で、業界は今月から防止対策をまとめた自治体向け手引書の配布も始めた。

 調査したのは、1都6県の古紙問屋約130社でつくる「関東製紙原料直納商工組合」(事務局・東京都台東区)。

 人口が同規模の自治体を比較し、抜き取り被害の平均値を出して損失量全体を35万〜50万トンと計算。自治体が問屋に古紙を引き渡す際の価格を1キロ当たり4円とし、損害額を14億〜20億円とはじき出した。

 自治体は古紙を「資源ごみ」として回収し、問屋に引き渡して得た収入は、自治体の歳入になる。横取り業者は、自治体の資源ごみの回収日を狙い、委託回収業者の先回りをして、夜間や早朝に集積所を回っている。こうして集めた古紙を闇ルートで換金している。

 02年度から抜き取り被害が急増した東京都杉並区では03年3月、区の集積所に出された古紙を区の「所有物」とし、勝手に持ち出せば、窃盗罪に問えるようにした。

 世田谷区も昨年末、抜き取り行為に20万円以下の罰金を設け、15日には初の条例違反者が警視庁に書類送検された。調べに対し、摘発された業者は古紙を廃品回収業者や製紙会社に持ち込んで換金しており、「古新聞が一番金になった」などと話していたという。

 組合の栗原正雄理事長は「古紙を自治体の所有物と定めた上で、条例で罰則規定を設けてもらえば、摘発を恐れて、被害は減ると思う」と話している。

    ◇

 古紙抜き取りが多発する背景には、段ボール古紙を中心として古紙価格の上昇傾向が続いていることがある。中国向けを中心とする輸出急増に伴って、国内での需給が逼迫(ひっぱく)しているためだ。製紙業界は今後しばらくは価格が高止まりするとみている。

 古紙再生促進センターの調査では、回収される古紙の4割を占める段ボール古紙の国内価格が02年6月から上昇に転じ、現在は1キロ当たり3円高い9.5円となっている。大手製紙会社によると、輸出向け価格は中国の需要拡大を背景に国内向けより同1〜2円ほど高く、「国内の需給が逼迫する一因となっている」という。

 同センターによると、90年代に年間30万〜50万トンだった古紙の輸出量は中国向けを中心に01年に147万トンと急増。今年は200万トンを突破するのは確実とみられている。中国で家電製品などを包装するのに使われる段ボール生産が伸びているためだ。

 製紙業界では、中国の経済成長による需要拡大は当面続くと見ており、古紙価格はしばらく高値が続きそうだ。(09/16 16:48)

http://www.asahi.com/national/update/0916/015.html