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2004年09月15日(水) 00時00分

メガ書店競争 秋の陣 丸の内、新宿、渋谷 ビジネスマンなどでにぎわう開店初日の丸善丸の内本店=東京都千代田区丸の内で 東京新聞

 「国内最大級の書店」と銘打った丸善丸の内本店が十四日、JR東京駅そばにオープンした。駅の反対側にある八重洲ブックセンター本店を上回る大規模店だ。紀伊国屋書店本店がある新宿でも、ジュンク堂書店が十月末に大型店を開店する。年々スケールアップしている書店大型化競争がこの秋、一段と激しさを増している。

 丸善丸の内本店は、同日、丸の内北口にオープンした再開発ビル「丸の内オアゾ(OAZO)」のキーテナント。四フロアの総面積は約五千八百平方メートルで、書籍数は約百二十万冊。ジュンク堂書店池袋本店(豊島区)の約六千六百平方メートル、百五十万冊には及ばないものの、国内屈指の大規模書店として登場した。

 この日の店内は午前中から、ビジネスマンたちでにぎわいを見せた。近くにオフィスがある会社員男性(43)は「丸の内には大きな書店がなかったので、助かります」。

 丸善の担当者は「丸の内・大手町エリアのビジネスマンを大々的に取り込みたい。うちは全国の大学や図書館に本を納めているので、ここなら東京に来た時に現物を見て選んでもらいやすい」と立地の理由を説明する。

 対する八重洲南口の八重洲ブックセンター本店(中央区)は約四千平方メートルで百四十万冊。丸善の出店を視野に入れ、売り場カウンターを並びやすいように改装したほか、サイン会や講演会などの充実に力を入れている。「こちらは負けない品ぞろえをしている。お客さんの反応を見てリニューアルをさらにすすめていきたい」(販売促進課)

 新宿でもジュンク堂書店が十月末、三越新宿店内に約三千六百平方メートル、九十万冊の大型店を開店。二つの大型店を構える紀伊国屋書店に挑む。渋谷駅の宮益坂交差点そばには、文教堂書店が十月一日、約千五百平方メートルの店を開く。「書店が過剰な池袋や新宿に比べると、渋谷は集客力がありながら、大規模書店が少なかった。天井まで五メートルもある特殊なつくりなので、高い棚に充実した品ぞろえができる」(経営企画室)

 かつて業界内では「床面積百坪(約三百三十平方メートル)で大型店」といわれたが、最近は様相が一変している。

 出版科学研究所のデータをもとに、新規出店した一店舗ごとの広さを算出してみると、一九八九年は約百六十平方メートルだったのが、九〇年代半ばから急激に増え、〇三年には約四百平方メートルに達した。

 出版社「アルメディア」の調べでは、書店数が大幅に減少しているにもかかわらず、全書店の床面積はよこばいで、東京都内では逆に増えている。

 日本書店商業組合連合会(千代田区)で、大型店の出店問題を担当する丸岡義博副会長は「これまでは大型書店対中小書店の図式だったが、大型書店同士の競争に変わりつつある」と話す。

 大型化の要因として丸岡さんが指摘するのは、バブル経済崩壊後のテナント料の下落と、書籍の「多品種少量生産化」だ。書籍の新刊点数は部数の減少を補うように増加傾向にあり、〇三年は年間約七万三千点に。これらの品をそろえるには、書店の床面積を増やすしかない。

 大手取次店が大型書店を顧客に囲い込むため、物件あっせんや各種の優遇措置で出店を促す「代理戦争」の背景もあるという。

 連合会の大川哲夫事務局長は「書籍・雑誌の販売額は、七年連続の前年割れなのに、出版点数は増えている。返品される前に新刊書をどんどんつくる出版社の自転車操業だ。粗製乱造による読者離れや、在庫の増加がこわい」と懸念する。

 連合会加盟の書店も一九八六年の約一万三千店をピークに、今年四月には約七千四百店まで減った。

 大川さんは「遠くの大型店に行ける人はいいが、街の書店が消えていくと、お年寄りたちが読書から離れてしまう」とした上で「地域の人への本の配達やガイド、読書サークルや読み聞かせ会の開催など、積極的に情報を発信していくしか、中小書店の生き残る道はないだろう」と話している。

 文・石井敬/写真・笠原和則、北村彰

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