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食品安全委員会のプリオン専門調査会で最後まで論議を呼んだのは、月齢幾つの牛までBSEの病原体である異常プリオンを検出できるかだった。「中間とりまとめ」原案では「二十カ月以下の月齢の感染牛を現在の検出感度の検査法で発見することは困難」としていたが、委員の中から「二十カ月が限界かどうか断定できない」とする反論が相次ぎ、最終的には「二十カ月以下」を削除した。
だが、実質的な差はほとんどないといってもいい。月齢二十カ月近くが検出の限界であることは、どの委員も認めている。その理由として、これまでに三百五十万頭検査した結果、月齢二十カ月以下の感染牛は見つかっていない。見つかった感染牛十一頭のうち、月齢二十一カ月と二十三カ月のプリオン量は他の感染牛の五百分の一から千分の一と少ないことなどを挙げている。
わが国のBSE対策は、BSE全頭検査と、プリオンの蓄積しやすい脳や脊髄(せきずい)など「特定危険部位」(SRM)の除去の二本立てで行ってきた。昨年末、米国で感染牛が発見され、輸入が停止されたあと、日本側は輸入再開の条件としてSRMの除去とともに全頭検査を求めてきた。
専門調査会が「検出限界」を認めたことで、全頭検査に強く反対してきた米国が勢いづき、輸入再開を強く迫ってくることは間違いない。
だが、仮に「月齢二十カ月以下」の米国産牛肉を検査をせずに輸入するとしても、米国が月齢をどのように証明するかがはっきりしない。米国では日本のように牛の個体管理がなされていないため、月齢の正確な把握が難しいからだ。二十一カ月以上でも「二十カ月以下」として輸入される恐れがある。
輸入を再開するには、米国側が月齢の正確な証明方法を日本側が納得できるように示すことが必要だ。同時に、それを日本側の求める方法で無条件に検証できる体制づくりも欠かせない。SRM除去の徹底についても同様である。
調査会が当面の結論をまとめたことで米国産牛肉をめぐる論議の舞台は上部の食品安全委員会に移る。
その際、輸入再開条件を十分に詰めずに見切り発車すれば、全頭検査でせっかく回復した牛肉への信頼を再び失うことになる。輸入再開に向けてどう対応するかで食品安全委員会は真価を問われるといえよう。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040907/col_____sha_____002.shtml