2004年09月07日(火) 13時11分
海外出張で持病悪化、短期でも労災…最高裁が逆転認定(読売新聞)
12日間の海外出張直後、ストレスで持病の十二指腸かいようを悪化させたのは労災だとして、貿易会社に勤務していた兵庫県芦屋市の元社員の男性(52)が神戸東労働基準監督署長を相手取り、療養補償給付金の不支給処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決が7日、最高裁第3小法廷であった。
浜田邦夫裁判長は「異例に強い精神的、肉体的負担のかかる過重な業務の遂行で、十二指腸かいようが自然の経過以上に急激に悪化したとみられる」と、業務と発症の因果関係を認め、1、2審判決を破棄、処分を取り消した。原告の逆転勝訴が確定した。
ストレスは、その程度や病気となった原因の客観的な証明が困難なため、長期にわたる心理的負担の蓄積などがない限り、労災認定を受けにくかった。最高裁が、短期出張後の発症もストレスによる労災と認めたことで、労働者救済の門戸が広がりそうだ。
判決によると、男性は1989年11—12月、5日間の国内出張後、休日を1日挟み、韓国、シンガポール、タイなど6か国・地域に12日間、海外出張。帰国直前、香港で腹痛を起こし、持病の十二指腸かいようがストレスで悪化したと診断され、手術も受けた。この間の労働時間は、商談や接待を中心に、国内出張中が計68時間、海外出張中が計144時間に上った。
男性は、長時間労働に加え、商談の難航や激しい移動による気温の変化で心理的な負担が重なったとして、90年3月、労働者災害補償保険法に基づき、療養補償給付金を同労基署に請求。同署が同年7月、不支給処分としたため、提訴した。
1、2審判決は、「出張が強度のストレスを与えたとは認められないうえ、原告は十二指腸かいようの悪化を防ぐ治療を怠っており、ストレスが発症の主要な原因ではない」として、請求を棄却していた。
男性側の弁護士は「労災と認められる過労性疾患の範囲を広げた画期的な判決だ。仕事のストレスで会社を休んでも、救済措置を受けることをあきらめていた多くのサラリーマンにとって朗報ではないか」と話している。
一方、辰巳吉常・神戸東労基署長は「判決を厳粛に受け止めており、出来るだけ速やかに療養費を給付したいと考えている」とのコメントを発表した。
(読売新聞) - 9月7日13時11分更新
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