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本気■
八月二十四日夕、米農務省の一室で、民主党が派遣した米国BSE調査団の山田正彦団長とペン農務次官が向き合った。
ペン次官「検査には限界がある。日本は全頭検査をしているから安全だと消費者を惑わせている」
山田氏「日本に牛肉を輸出したいなら、日本の基準に合わせて全頭検査をすればいい」
激しい応酬が二時間近くも続いた。
その二日後には記者会見したベネマン農務長官が、日米の政府間では全頭検査から若い牛を除外する方向で調整が進んでいるかのように発言。農水省の石原葵事務次官があわてて否定する一幕もあった。
輸出再開にかける米国の熱意は“沸点”に達している。米国政府の強硬姿勢の背景には、十一月の大統領選を前に、輸出再開を米政府に求める米国の畜産農家や食肉業界の圧力がある。
親米路線をとる日本政府としても、輸入再開問題で米国との関係にひびを入れたくはないのが本音。
米国と「夏をめどに合意」を打ち出したのも、輸入再開へ一定の道筋をつけ、食肉関連業界を大きな支持基盤にするブッシュ大統領にポイントを稼がせたい意図がのぞいている。
安全性■
日本側では、六日に開かれる食品安全委プリオン専門調査会で、これまでの感染例などから「生後二十カ月以下の感染検出は困難」として基準の緩和を容認する方向で調整が進んでおり、政府はこれを“お墨付き”に具体的な省令改正の検討に入る考えだ。
ただ、問題は日本の消費者を納得させられるか、だ。
輸出再開を狙う米国は今後、BSE対策を強化する方針。だが、その内容はあくまでも生後三十カ月以上の牛が対象。日本国内では生後二十一カ月や二十三カ月の感染牛が確認されており、日本側にとっては「二十カ月以下の除外」がギリギリの妥協線だ。
米国では日本のように一頭一頭の生産者や生年月日を記録・管理する制度は確立されておらず、牛の月齢がきちんとチェックできるのかも不透明。農水省の幹部は「日米では食肉処理する頭数も安全意識もまったく違う。すんなりとはいかない」と言う。
■消費者ら“政府包囲網”
責任■
実際、国内の慎重論は強い。
自民党の小里貞利・中央畜産会会長は「輸入再開で国民のリスクが高まるのではだめだ。ようやく回復してきた牛肉の信頼を、また損なうことだけは避けたい」と話す。
全国各地で開かれてきた国と消費者の意見交換会でも、検査基準の緩和について「防護壁を低くする前に、検査方法の改良などやるべきことがあるのではないか」など反対論が多数を占める。
さらに、政府が輸入解禁のより所にしたい当の食品安全委専門委員からも「輸入再開の是非は一度も議論していない。科学的評価を流用されるのは心外だ」と反発の声が広がっている。
こうした声を振り切り、国内の検査基準を甘くしてまで輸入再開に踏み切るのか。間違いなく言えるのは、消費者を軽視した「見切り発車」の末にBSE問題が再発することになれば、政府を揺るがす大問題になるということだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040906/mng_____kakushin000.shtml