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チョーサタイのメンバー、三谷旭さん(慶応大三年)は、調査フィールドを東京・渋谷と決めて活動している。スクランブル交差点を渡るとき、行き交う人々を次々とケータイで撮影してはサイトに送信する。センター街では、道ばたに座り込む若者たちに向かってパシャッ。「ケータイ写真は被写体に近づかないとだめ。相手に怪しまれないよう、迷惑にならないよう、それでもちゃんと現場の状況が伝わるように撮るのが難しい」と三谷さん。今年、大学を卒業してゲームメーカーに就職した島田賢一さんも「ケータイだからB級のオモシロ写真もたくさん送れる」と、プロジェクトに意欲的だ。
このプロジェクトは二〇〇三年四月、環境情報学部で発足した。メンバーは約二十人。身の回りの日常をケータイで撮影し、コメントをつけてプロジェクトのホームページ上のサイトに送る。集まった写真はメンバーに公開され、閲覧される。カメラ付きケータイを選んだ理由は、いつでもどこでも誰もが持ち歩き、気軽に撮影でき、インターネットで写真を大量に集められるからだ。
チョーサタイの目的は、日常の出来事を問題意識や探求心を持って観察し、問題解決の糸口をつかんだり、理解を深めたりすること。たとえば、六本木ヒルズを撮影して「なぜこういう人たちがここに集まるのか」を調べたり、あるメンバーの写真ばかりを時系列に並べ、その人のライフスタイルを調べたりする。
昨年十一月、SFCの研究発表展示会「オープンリサーチフォーラム」が六本木ヒルズで行われ、ケータイ写真五千枚が壁一面に張り付けられた。来場者からは「面白い」と好評だったが、これはあくまでも活動紹介。この大量の写真をいかに分析するかが今後の課題だ。それが実現したとき、私たちの見慣れた世界が、新たな切り口で鮮明に語られる。
張紗智さん(同三年)は、東京・下北沢で七十二枚撮影した。そのほとんどが地面が広く写った写真だった。張さんは「写真を見て初めて、この街が比較的低層のビルに囲まれていること、そして若者の街であると同時にお年寄りも住む住宅地としても機能していることに気づいた」という。そして「毎日、何万枚もの写真がサイトに送られれば、それだけで今の日本を語るのに十分なメッセージ性を持つ」と、このプロジェクトの可能性を指摘する。
老若男女、住んでいる地域や職業、趣味し好の違いでどんな写真が撮影されるのか、それを比較するだけでも面白い。日本のカメラ付きケータイの普及は、日本独特のコミュニケーション感覚が背景にある。ケータイ写真を切り口に、新しい日本らしさが発見できればいいなと思う。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20040902/ftu_____dgi_____000.shtml