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2004年09月01日(水) 03時12分

郵便誤配巡り「国家賠償」異例の再審決定…大阪高裁読売新聞

 最高裁大法廷が2002年に、郵便の配達ミスによる賠償責任を限定した郵便法の規定について、違憲判決を出したことを受け、大阪高裁(下方元子裁判長)が、原告側の敗訴が確定した同種の国家賠償請求訴訟の再審開始を決定していたことが、31日分かった。

 最高裁による違憲判決の効力が、その訴訟以外にも直ちに及ぶとした異例の判断。日本郵政公社は最高裁に特別抗告しているが、大阪高裁の判断が確定すれば、違憲判決の影響力が大幅に強まることになるため、今後の司法判断が注目される。

 再審開始決定が出たのは、兵庫県内の男性が、誤配による損害の賠償を国(現日本郵政公社)に求めた訴訟で、決定は今年5月10日付。

 1998年、債権者だった男性の申し立てを受け、裁判所が配達日を指定したうえで、債務者側に差し押さえ命令を発送したが、郵便局員のミスで指定日より約3週間早く届いてしまい、90万円が回収不能になった。

 このため、男性は同額の賠償を求めて提訴したが、担当した簡裁は99年10月、賠償の対象を書留郵便と小包の紛失、破損に限定していた郵便法の規定を根拠に請求を棄却し、確定した。

 ところが、2002年9月、最高裁大法廷は、別の配達ミスを巡る損害賠償請求訴訟の判決で、同法の規定が、国家賠償を求める権利を保障した憲法17条に違反すると判断した。

 男性は同年10月、この大法廷判決を知り、再審を請求。簡裁、地裁は退けたが、男性の抗告を受けた大阪高裁は、「違憲判断は当事者間だけで効力があると考えるのは不十分で、過去の確定判決についても、その根拠となった法律の規定が違憲判断によって通用しなくなった場合は、再審で救済されるべきだ」と指摘、再審開始を決定した。

 戦後、最高裁が法律の規定に違憲判決を出したのは、2002年の郵便法を含め6件だけで、15年ぶりだった。しかし、従来の通説では、こうした判決の効力は、第三者には及ばないとされていた。

 違憲判決を受け、郵便法は同年11月に改正され、配達の遅れや誤配の場合にも国に賠償請求できるようになったが、大阪高裁の決定に対し、国から訴訟を引き継いだ日本郵政公社は、「通説に反しているだけでなく、(官庁など)法の執行機関に違憲判断に沿った対応を義務づけることになり、三権分立にも違反する」として、最高裁に特別抗告している。

 ◆浦部法穂・名古屋大大学院教授(憲法学)の話「違憲判決の効力について、裁判所が正面から判断した最初の事例だろう。効力が当事者以外に及び、しかも過去の確定判決にさかのぼるとすれば、大きな混乱を招きかねない。違憲立法審査権を定めた憲法八一条の解釈を巡る重要な問題で、最高裁は大法廷で決着をつけるべきだ」

 ◆再審=判決確定後、新たに事実認定の誤りが見つかった場合などに限り、当事者の請求に基づき、改めて裁判を開始して判決を言い渡す制度。刑事裁判で冤罪(えんざい)の人を救済するため利用されることが多いが、民事裁判でも、確定判決の基礎となった別の判決が覆ったり、証拠の偽造が発覚したりした場合などは、再審が開始される。
(読売新聞) - 9月1日3時12分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040901-00000001-yom-soci